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実例Q&A

見えない借金と限定承認【Q&A №286】

2013年6月19日


 
亡くなった父の遺産相続です。
マンションの2分の1の相続と見えない負債に相続するべきか悩んでいます。
信用情報を調査し、カードローンの代位弁済がわかり、債権回収会社を調べて支払金額が100万ほどありました。この負債については、父の母が死亡退職金をもらっているので、支払いを済ませています。同じように数社に残っていた借金も死亡退職金から支払いを済ませ、調べた借金は完済しています。
 本来、単純に相続すればいいのですが、離婚して生活を共にしていない私は不安でいっぱいです。
まずこのような状況で、限定承認の申し立てが可能なのでしょうか。もし負債がある場合、マンションは競売になるのでしょうか?半分は私の母が所有権をもっており、父の母が居住中です。
奨学金の返済のため、父の死亡退職金の一部をもらい、500万弱手元に現金があります。
どうぞよろしくお願いします。

記載内容  死亡退職金 限定承認 負債調査

(ノラ黒)



【限定承認をするために必要な要件】

限定承認とは、遺産があまったら、その余った分だけ相続をし、負債が多い場合には、遺産の限度で支払いをし、それ以上の債務を負わないという制度です。
この限定承認をする前提として次の要件を満たしている必要があります。

① 相続開始を知って3ケ月以内であること。
② 相続人が複数いる場合には、相続人全員が限定承認の申請をしなければならない。
これらの要件を満たしている場合には限定承認の申請をすることができます。
ただ、遺産の金銭から支払いをするという単純相続に該当するような事実があれば限定相続はできませんが、質問の場合、遺産ではない死亡退職金からの支払いですので、限定承認は可能だと思われます。

【限定承認の手続をする人は少ない】
限定承認は、家庭裁判所に限定承認の申請、債権者への公告、財産の換価と債権者への弁済などをはじめとする一連の煩雑な手続をする必要があります。
加えて、限定承認の場合に、相続で移転される不動産については、相続税の扱いではなく、不動産譲渡税が課税されます(対象不動産の取得価額や取得費用等を控除した差額の約20%)。
このように手続きが複雑で、かつ税務上の不利益もあり、限定承認をする人は極めて少ないのが実情です。
それでも限定承認をするというのであれば、法律の専門家である弁護士に依頼するといいでしょう。

【金銭での支払いができない場合には競売される】
相続債務があり、それを金銭で支払いできない場合には、不動産が競売されることになります。
但し、競売の対象となるのは、遺産に含まれる不動産である持分2分の1(お父さん名義の分)のみです

【どこかで決断をしなければならない】
本当は、お母さんが得た死亡退職金からの支払いの前に、限定承認の手続きをするかどうかを判断するべきでした。
相続開始から3ケ月以内であれば、家庭裁判所に相続放棄期間の伸長願いを出して、時間を稼ぎ(通常3ケ月程度の延長をしてくれます)、その間、新たな債務請求がないのであれば、単純承認をするというのが妥当な解決案でしょう。
その間、新たな債務の請求があったのであれば、その債務の額と遺産とを比較して、支払いをするか限定承認をするかを検討されるといいでしょう。
いずれにせよ、現実には100%安心して相続を承認することは不可能ですので、どこかで見切りを付け、相続放棄や限定承認などの安全策を重視するか、遺産のメリットを重視するかの決断をせざるを得ないでしょう。

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