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実例Q&A

母の采配に任せるという遺言の効力【Q&A №476】

2015年10月22日


父が亡くなり、母宛の「遺産の分配などは任せる」という内容の手紙があります。
母は全ての財産を好きなようにして良いでしょうか?

【ご質問内容】

遺言書かの確認

父がなくなった後に、正式ではありませんが遺言状のような手紙がみつかりました。

自分の遺した資産の分配などは、母の采配に任せる・・との内容でした。

生命保険

固定資産はなく、全て現金と母が受取人の保険でした。

遺産の公開

最近、母に父の遺産の公開を求めたところ、総額は4000万円と聞いています。(母のメモしか残っていません)

母は父の手紙のとおり自分の采配で、私達(娘2人)には、内訳を公開せず、全て自分名義の口座にいれました。

その後、そこから2000万円を自分の名前で死亡保険をかけ、受取人を娘二人にしています。

それも、最近わかりました。

私達娘は、母が亡くなるのを待つのではなく、できれば今、その保険を解約し、現金をもらいたいと母に頼みました。

母は不本意なようで、私のお金だから、私の好きにすると言います。

父からの手紙に従っている母のこの権利は有効なのでしょうか。質問申し上げます。

記載内容 預金 相続手続 生命保険

(huruhuru-516)


【遺言書として有効であるかどうかを確認する必要がある】

質問からいうと、お父さんが残されたのは遺言書ではない可能性が高いように思われますが、念のために遺言書になるかどうかを確認されるといいでしょう。

遺言書として認められるための要件については【コラム】自筆証書遺言をご参照ください。

次に遺言書として有効なものであったとしても、《ある特定の人に遺産の処理を任せます》という内容であったときに、その任された人が他の相続人の意見も聞かずに、勝手に遺産分割することができるのかという点も法的に問題なります。

この点については、その言葉がお母さんに全部相続させるという意味なのか、または、文字通り遺産分割の仕方を任せるという意味なのかという文言の解釈の問題になります。

仮に後の場合であるとすると、遺産分割は相続人がすることであり、遺言者がそのようなことまで指定できないはずだから、遺言のその部分は無効だと述べていると理解することができる最近の裁判例(本論ではない部分ですが)があることも知っておくといいでしょう(大阪高等裁判所判決平成25年9月5日:末尾参照裁判例をご覧ください)。

なお、この裁判例では、亡くなった方の状況等からすると、全部相続させるという意味だと判断しています。

ただ、質問の趣旨から言えば、遺言書ではないことが前提のようですので、以下においてはそのような前提で回答をしていきます。

【生命保険は遺産分割の対象ではない】

生命保険は遺産ではありません(この点についてはQ&A №299をご参照ください)。

従って、生命保険は遺産分割の対象にはならず、原則として保険で受取人として指定された人が単独で取得します。

【お父さんの現金は遺産分割しなければならない】

遺産の中に預貯金があれば、それは法定相続人がその法定相続分に応じて分割取得します。

ただ、質問では預貯金はなく、現金ということですので、お母さんがその全部を手元に置かれており、それをお母さんの預金口座に入金したのでしょう。

その現金がお父さんの遺産であることが明らかであれば、お父さんの遺産として分割の対象になります。

あなたとしてはその現金の法定相続分を分割してもらう権利があります。

そのお金が生命保険の掛け金に使用されているかどうかは別として、あなたとしては法定相続分に該当する現金を支払うようにお母さんに請求されるといいでしょう。

【預貯金の調査も必要不可欠です】

預貯金口座がない人はまずいないでしょう。

現金で4000万円もあったのなら、当然、お父さんの預貯金口座があったと思われます。

お母さんが預貯金がなかったと主張されているかもしれませんが、信じがたいことです。

死亡時の残高が少ないかもしれませんが、生前に無断で引き出された可能性もあります。

金融機関の履歴照会が必要不可欠でしょう(Q&A №6をご参照ください)。

【弁護士に相談をした方がよい】

今回の質問では、お父さんの手紙が遺言書として効力があるかどうか、また、仮に遺言書であると判断されたとしても、その内容がどの程度の効力を有するのかという法律問題があります。

また、今後、お母さんにどのように対応していけばいいのかという問題もあります。

弁護士としてはその手紙を見た上で法的な判断をするということになります。

事件を依頼するかどうかは別として、早い段階で相続に詳しい弁護士の意見をお聞きになるといいでしょう。

 

《参照裁判例》
大阪高等裁判所平成25年9月5日判決から引用
(一般論としてではなく、本件の事情からすると)「全てまかせますよろしくお願いします」という本件遺言は、…遺産分割手続きを委せるという意味であるとは考え難く(本件遺言が遺産分割手続をすることを控訴人に委せる趣旨であるとすると、そもそもそのような遺言は無意味である。)、…遺産全部を控訴人に包括遺贈する趣旨のものであると理解するのが相当である。

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