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実例Q&A

遺留分と養育費の相殺【Q&A №501】

2016年5月12日


【質問の要旨】

別居中の妻が死亡したが、婚姻費用と遺留分はどうなるか

記載内容  婚姻費用 養育費 相殺

【ご質問内容】

家内と中二の子供と別居3年後に家内死亡。

審判(算定表)による婚姻費用を死亡前月(高二)まで支払。

遺言により、遺産(5千万)は全額子供が相続。

私(家内死亡前から病気で失業し借金生活)は、遺留分(1/4=1250万円)を求めて本人訴訟を起こすも、子供(義母と同居し私立大学卒業)側は、高二から大学卒業までの生活費や学費である養育費の実費(1600万円)と遺留分の相殺を要求。

(1)遺言書の内容(子供の生活費や大学進学費用に使え)は、母子の約束で扶養料を先渡しする義務(相続債務)とみなされるのか。

(2)私は無収入で数千万円の借金があり扶養能力はないが、借金より少ない遺留分をもらえば、多額の遺産のある子どもに対して養育費支払い義務があるのか。(子供の生活水準の方が高い)

(3)もし養育費の支払いが必要な場合は、

(ⅰ)月10万円の未払婚姻費用を基に、19歳までの生活費(大学費用含む?)を遺留分から控除するのか。

(ⅱ)20歳以上も、上記金額を大学卒業歳まで適用?

又は子供の主張する実費を遺留分又は遺産?から控除するのか。

十分な資産がある20歳以上の子供に、養育費の支払いが必要か。

(ⅲ)養育費が相続債務とみなされる場合は、養育費の半分が家内の債務で遺産から控除され、私の半分は扶養能力があれば遺留分から控除されるという考えか。

(ⅳ)上記に限らず、どのように考えるが正しいですか。

(オーくん)


【婚姻費用は妻の死亡により消滅する】

あなたは別居中の奥さんに対して婚姻費用を支払う義務を負っておられるようですが、この義務は奥さんが死亡した時点で消滅します。

なぜなら、婚姻費用は婚姻があることを前提とするものですが、奥さんの死亡により婚姻そのものがなくなるからです。

ただ、奥さんが死亡するまでに未払いの婚姻費用があれば、それは既に生前の婚姻期間中に発生した請求債権(未払い婚姻費用請求債権)として相続の対象になります。

【養育費の支払いについて】

婚姻費用の中には、実質上、未成年の子供の養育費分も含まれています。

奥さんの死亡により、死亡後の婚姻費用の支払いは不要になりますが、今度はあなたと子供さんとの養育費問題が現実化します。

子供さんから請求されれば、親であるあなたに養育費の支払義務が生じる場合があります。

【本件の場合の養育費支払いの要否について】

では、子供さんの言うような養育費の支払いが必要なのでしょうか。

収入及び時期と言う2つの面で支払い義務の履行を拒む理由が考えられます。

まず、収入の点からは次のように考えるといいでしょう。

養育費の支払いは支払い義務者である親に収入があることを前提にしていますが、あなたに収入がないというのであれば支払い義務は発生しないということになります。

次に時期的に言えば、養育費の支払いなどについて調停が申立される場合、支払いの開始時期はその調停申立のあった時期だとされています。

養育費の発生時期については、請求のあった時点以降であるという考えも強く、この考えに従えば請求前の過去に遡っての請求はできないということになります。

又、月毎に支払われる定期給付債権であるとして、民法169条の短期消滅時効の適用を受けるとして過去5年間の分だけの請求を認める考えもありえます。

これらの点の詳しいことを知りたければ、別途、養育費についての文献やネット検索をされるといいでしょう。

なお、子供に財産があるということだけで、養育費の支払い義務が免除されるということはないと思われますが、この点も別途調査されることをお勧めします。

又、成年に達した後の大学終了時点までの養育費の支払いの要否や学費分まで支払いの要否についても別途調査されるといいでしょう。

【遺留分減殺請求により得た利益をどう考えるか】

あなたとしては、今回遺留分減殺請求により収入を得ることになります。

しかし、あなたとしては養育費の算定の基礎となる収入は給料等の継続的な収入であり、遺留分のような一時的な収入とは言えないと主張することも可能です。

養育費算定表には給料年額あるいは自営業者の年収入額を前提として算定グラフが作られているからです。

ただ、このような主張に対しては、給料や自営での収入ではなくとも、親であるあなたが収入を得ているのであれば、給料等の収入に準じるものとして、算定される可能性もありえます。

その場合には、その収入のあった年度については、遺留分減殺請求額を前提にして計算された養育費を支払い、その翌年以降は無収入として養育費の支払いを拒むということを主張されえるといいでしょう。

なお、無収入であっても《潜在的稼働能力があり、就労が困難といえないような事情がある場合には、ある程度の収入があるものとして、養育費が算定される可能性がありえますので、この点も併せご留意ください。

【遺留分と養育費の相殺との関係】

結局、前項の後段の前提(遺留分の支払いのあった年度にのみ、それを前提として養育費を支払う)というのであれば、その年度の養育費額のみが相殺の対象なり、その分が遺留分から減額されるという結論になるでしょう。

 

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