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実例Q&A

第三者の寄与と遺言【Q&A №532】

2016年9月29日

 

【質問の要旨①】

相続人の配偶者が費用負担すると寄与分になるか?

【ご質問内容①】

被相続人(父)の介護費用(老人ホーム入居関係費用、医療費など)の一部、不要となった父所有の家屋の固定資産税や解体費用、家財道具の撤去費用などを相続人である子(女)の配偶者(夫)が負担した場合、将来被相続人が逝去時、相続される過程の中で寄与分として認められますか?
(相続人は専業主婦により収入はなく、かかった費用は夫に委ねざるをえない状況による理由から。)

(九州女児)

 

【質問の要旨②】

特別受益の持ち戻しを遺言書に記載した場合、有効か

【ご質問内容②】

被相続人より住宅資金の援助として生前贈与を受けたという証明を取り付けるのが困難である場合、遺言書に「遺言者は相続人Aが家屋を購入するに際し、相続人Aに住宅資金として200万円を援助した。

相続人Aはこれを特別受益として持ち戻すこと」と記載した際、遺言書として認められますか?

記載内容 介護費用 援助

(博多っ子)


※同一人物と思われる方から2つに分けてご質問いただいていますが、回答は一つにまとめています。ご了解ください。

【寄与分の問題ではなく、相続債務の問題ではないのか?】

被相続人のお父さんの介護費用(老人ホーム入居関係費用、医療費など)の一部を負担したことについては、被相続人の支払うべき分の立替支払いをしたとして理解することが可能です。

その前提に立てば、寄与分という以前に、被相続人は立替支払いをした人に対して返還債務を負い、この分は相続債務として法定相続人に承継されます。

同様に《不要となった父所有の家屋の固定資産税や解体費用、家財道具の撤去費用など》についても被相続人が立替費用返還債務を負い、これが相続人債務になると理解することが可能ですし、その方が実態に見合うでしょう。

【寄与分としてみた場合の問題点】

もし、上記費用の返還を求めないという前提で出したということであれば、寄与分の問題となります。

寄与分は認められることが少ないですが、例えば、付添看護をしたというような場合には、付添等をした分、ヘルパーの料金の支払いを免れた分程度しか、寄与分は認められません。

ただ、今回の質問のケースは、上記各支払いにより、被相続人の遺産が減少を免れたことが明らかですので、寄与分として認められる可能性はあると思われます。

問題は、寄与分は法定相続人間で認められる制度だという点です。

今回の質問は、法定相続人ではなく、その配偶者(夫)が寄与したという点にあります。

夫婦であり、一体と見て、夫の寄与分も妻の寄与と同視するという考え方が多いようですが、これらの問題点があることを考えれ ば、やはり前項で記載した立替金返還請求債務として処理するのが妥当だと思います。

【特別受益に関する記載の効力】

遺言の効力を考える場合、

① その記載をして、遺言書全体が無効になるのかどうか?

② 遺言書全体としては無効にならないとしても、その記載が有効なのか?

という2つの方向からの検討が必要になります。

まず、最初の①の観点から言えば、「遺言者は相続人Aが家屋を購入するに際し、相続人Aに住宅資金として200万円を援助した。相続人Aはこれを特別受益として持ち戻すこと」という内容は遺言書本体ではなく、遺言者の希望を書いた《付言事項》というものにすぎず、そのため、遺言書全体が無効になるということはありません。

次に、上記②の付言事項として効力があるかという点ですが、仮に上記のような記載をしても、住宅資金を援助した事実があることの決定的な証拠にはならず、又、特別受益になるものでもありません。

前者はそのような事実があるかどうかの問題であり、後者はそのような事実があった場合にどのように法的評価するかの問題であり、いずれも遺言者が決定するべき事項ではなく、最終的に裁判所が判断するべき事項です。

もし、200万円を特別受益したから、その分、その受益者の取り分を減らしたいのであれば、その受益者の相続額を減額した配分の内容の遺言書を作成するといいでしょう。

 

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