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実例Q&A

遺産の対象財産と計算方法【Q&A №559】

2017年2月14日

 


【質問の要旨】

父と兄が共有していた家や、預貯金、保険金などを考慮すると、父の遺産はいくらになるか。

【ご質問内容】

相続人兄と私のみ。

遺産は共有名義の家(持分兄6:父4)。

死亡保険金1450万円(受取人私)あり。

家は同居を前提に父が1450万円出したが、喧嘩により同居を断られ一度もその家には住まず、アパートを借り生活。

何度もお金をかえしてくれと頼んだが、聞いてもらえず。

少額の個人年金の受取と兄と私の援助で生活。

2年前父とのトラブルで兄家族は隣の市へ引越。

その1年後父が他界。

葬儀の際、家は父が亡くなる半年ほど前から人に貸していることを聞く。(父は知らない。)

今回、家を売りたいから、早くサインをしてと連絡が来る。

家は兄が相続。(2680万円で売却予定。)

生命保険は私が受取る。

父の葬儀代?円、アパートのリフォーム代192万円、他に亡くなった後かかった費用は兄と私の折半という遺産分割書を作成す ると。

兄は1060万円しかもらえず、私は生命保険を全部受取るんだから文句ないよなという感じです。

生前父に兄は400万円程度、私は家賃など約350万お金を援助しています。

兄は共有なのに10年間自分たちだけで住み続け、その後無断で人に貸し収入(10万円程度/月)も独り占めにしていた。

実際のところ父の遺産はいくらと考えられますか?

兄は12年ほど前に土地(100万程度の価値)を譲り受けています。

分割の内容は後で決めるとして、取り急ぎ売ることの同意を早くしろとも言われています。

今同意するのは何か私の不利益となりますか?

(たいよう)

 

【今、同意するのはリスクが残る】

まず、遺産概要が判明し、家の売却代金からあなたが取得する金額がゼロであることが判明するまで売却に同意するべきではありません。

なぜなら、家の売却代金を兄に渡すと勝手に使い込み取り返せなくなるおそれがありますし、そもそも兄の要望に応じる法的な義務はありません。

【遺産内容について】

次に遺産の概要ですが、共有名義の家(以下、家といいます)は、父の持ち分が40%ですので、その40%の持ち分が遺産に含まれます。これに加え、父名義のその他の財産(預貯金や株式等の有価証券、動産など)が遺産になります。

そのため、結論から言えば、次の通りになると思われます。

遺産は 
①家の持分(売却代金1060万円)
 ※売却代金2680万円×4/10(持分)=1072万円ですが、ご相談に記載の通り1060万円であるとして回答しています。

②父名義の預貯金+有価証券+動産

③賃料のうち、父の持分相当額(40%)が特別受益として持ち戻し

(④場合により、生命保険金1450万円も特別受益として持ち戻し※次項参照)

その他、亡くなった後にかかった費用

①葬儀代  (詳細不明)

②リフォーム代 (192万円)

引き続き、特別受益について解説していきます。

【保険金も特別受益の可能性がある】

あなたが受け取った死亡保険金は、原則として遺産とは扱われません。

もっとも、今回は主な遺産が自宅(持ち分)1060万円に対し、保険金額が1450万円と遺産額に比べて高額ですので、ほかに遺産がなければ保険金はあなたに対する遺産の前渡し(特別受益)と同様に扱われ、遺産に持ち戻される可能性があります。詳細は当ブログQ&A №298をご参照ください。

【父の家に住んでいたことは特別受益にならない】

次に、兄が一時居住していた自宅は、被相続人である父と兄の共有ですが、父の持ち分を無償で使用していたことは特別受益にはあたりません。

お気持ちはわかりますが、法律上、家屋の無償使用については、権利性が低いとされ、特別受益になることは少ないのが実状です。

【賃料収入は不当利得ないし特別受益】

もっとも、今回は兄が(父の死亡半年前から)他人に貸して賃料を得ています。おそらく兄は父に無断で他人に貸したのでしょうから、父の持ち分(40%)については父にも持分(40%)の限度で賃料の分配を受ける権利があります。

この返還請求権が遺産に含まれるという主張も可能でしょう。

なお、父がその賃貸を了承していた場合については賃料の40%(父の持ち分)は特別受益にあたりうると思われます(この問題も当ブログQ&A №539に同様の記載があります)。

【死亡後の賃料は分割される】

父死亡後の賃料については、相続人がその持ち分に応じて遺産とは別に取得する解決が一般的です。参考までに。

【葬儀代、リフォーム代の扱い】

まず、父が賃借していたアパートのリフォーム代192万円は、おそらくアパートを退去する際に要した立退き費用という前提で回答いたします。

そうすると、立ち退き費用は父が負うべき債務ですので、父の生前債務と同様に扱っていいでしょう。
次に葬儀代ですが、あなたが葬儀に出席されていたのなら、相続分に応じて相続人で分担するような解決例が多いです。

【以上の検討の結果、遺産は】

以上の検討の結果、遺産は

①家の持ち分(売却代金1060万円)

②他の預貯金+有価証券+動産

③兄が収受した賃料のうち、父の持分相当額(40%)

(④場合により、生命保険金が特別受益として持ち戻し)

相続人で折半すべき債務

葬儀代  (詳細不明)

リフォーム代 (192万円)

となります。参考になれば幸いです。

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