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実例Q&A

認知症の母と公正証書遺言【Q&A №562】

2017年3月27日



【質問の要旨】

複雑な内容の遺言書と、長谷川式認知スケールの点数

記載内容 認知症 公正証書遺言 無効

【ご質問内容】

去年4月に認知症と診断された母がおります。不動産と預貯金があり、診断される以前から、家をついだ長女にたくさんのこすと、次女にも口頭では伝えておりました。

が、次女の配偶者がいろいろと言ってきたため、12月に公正証書遺言を専門家と相談して作成しました。

内容は、不動産はそれぞれこれは長女に、あれは次女にと記載されており、預貯金は、割合で書かれてあるとのことです。

不動産は、かなりの数があり、1つずつ指定しているので、細かい内容になっていると思われます。

認知症の場合、細かい遺言書は無効になりやすいともきき、不安です。

なお妹の遺留分はちゃんとみたしております。

長谷川式での数値は11月で17でした。

この遺言書の無効の裁判を妹におこされると仮定して、いま現在対処方法はあるのでしょうか?

また裁判をおこされた場合、勝てる可能性は、どのぐらいなのでしょうか?

(プリン)


【公正証書遺言は有効とされる可能性が高い】

お母さんは、公正証書遺言を作成されているようですが、公正証書遺言を作成する際には、裁判官や検察官を何十年もした経験のある公証人が関与します。

遺言書作成時には、公証人が遺言者であるお母さんに直接会い、遺言書が遺言者の意思どおりであるかを確認するとともに、遺言者に判断能力があるかどうかも確認します。

もし遺言者に判断(意思)能力がないというのであれば、公証人は遺言書を作成しません。

そのため、公正証書遺言が作成されているというのであれば、その公証人が意思能力ありと判断したということであり、それが無効とされる可能性は少ないと考えていいでしょう。

【長谷川認知スケールの点数が17点なら有効の可能性が高い】

お母さんは、遺言を作成する1か月前にした長谷川式認知スケール(満点30点)で17点だったとのことです。

これまでの裁判例から見れば、意思能力があったと判断される可能性が高いといえます(【長谷川式認知スケールと意思能力についての裁判例一覧表】参照)。

ただ、意思能力は長谷川式の点数だけで判断されるわけではありません。

たとえば、遺言書の内容が、例えば《全遺産は長男に相続させる》という簡単なものであれば点数が低くとも有効になる可能性が高くなり、逆に複雑な相続を定めていれば、

それがわかる意思能力が必要とされるために、点数が高いことが要求されるということになります。

また、次項に記載して事項をも含めての総合判断ということになります。

【意思能力についての他の判断資料について】

なお、意思能力の判断資料としては、上記の長谷川式認知スケールだけではなく、病院に入院し、あるいは施設に入所などされていた場合には、その病院でのカルテ、施設

の介護日誌などでお母さんの言動が記録されていることも多く、それも意思能力の有無の判断資料になることを憶えておかれるといいでしょう。

また、現在、お母さんに判断能力があるのなら、その元気な姿をビデオで撮影する等して将来の訴訟等に備えるといいでしょう。

【勝訴の可能性について】

意思能力の有無は長谷川式のテストやカルテ等の内容も含めての総合判断ですし、又、相手方の妹さんの主張や提出する証拠を見て、裁判所が最終的に判断するべきことですので、現段階で勝訴の可能性を聞かれたとしても、回答できません。

一般的に言えば、意思能力に関する裁判はなかなか難しいことが多く、当事務所で意思能力を争った訴訟でも、裁判官が迷いに迷ったことが判決内容から窺えるものすら存在するほどのものだ、ということも付言しておきます。

 

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