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実例Q&A

相続 調停から審判【Q&A №596】

2018年1月15日

【質問の要旨】

姉名義だが、父と姉が債務を負っている住宅の残ローンの半分は相続しなければならないのか。

【ご質問内容】

審判をするか悩んでおります。現在調停をしており先日担当裁判官と直接話をしましたが納得が行くものではありません。

弁護士を入れて進めていますが、同じ結果になったとしても調停と審判では違うと審判を勧められています。
 

※特別受益と住宅ローン:家は姉名義で住宅ローンは二人で払っていたのでそれは特別受益ではないかと主張した。

 

ボーナス払年二回11万ずつ現金で渡し、月々支払は光熱費と相殺していた。
 

2世帯住宅だがメーターはひとつで父の口座から引落しで支払をしていた。

裁判官の見解:ボーナス払いの現金を渡してたと言う証拠がない、光熱費が父の口座から引落としされてるのは明確だが姉が現金を渡してたかも知れないし相殺してたとは認められない従って特別受益は認められない。

住宅ローンの債務についても半分の300万を負担する事、相続の分配に含んで行う。
※定期預金引出:生前父から電話があり、障害を持つ弟が入所している施設に寄付しないと居られなくなると言われ定期を渡した。

姉に確認したら父に対して制裁だと話し返すよう話したが弟の保険に入ったと嘘を言い返済しなかった。

裁判官の見解:定期解約をしたのは金融機関の書類で姉なのは事実だが、その後どうなったかは明白でない為、戻せとは言えず本件とは別に返還請求を別途するようにと。

(なつ)

 ※敬称略とさせていただきます

【父の支払を示す証拠が大前提】

まず、今回は姉の単独名義で取得した自宅の住宅ローンについて、そのローン代金について父と姉がそれぞれ別個に、分割して借り入れをしたケースです。

ところで質問では、ローンの返済は姉の口座から引き落されていたとのことです。

この場合、もし、父が姉の口座にお金を入れていなければ父は実質的に1円も負担していないことになります。

調停や審判では何よりも証拠の有無が重視されます。

そうすると、父が支払った証拠がない本件では、特別受益とは認められないものと思われます。

【親子間では光熱費の無償使用もありうる(ローンとの相殺)】

次に、あなたは、父と姉との間に「父が姉に渡す(父名義部分の)ローンの支払資金と姉が父に支払うべき光熱費を相殺する」という約束があったことを主張されているようです。

しかし、今回は父が姉にお金を渡した証拠がないため、第三者の立場から見れば「父は姉の家に無償で住ませてもらっていた」という状況に見えてしまいます。

そのため、父はそもそも姉に光熱費を請求するつもりがなかったと裁判所は考えるしかない状況かもしれません。

ここはあなたの側で父と姉との間に相殺の約束があったことを立証する必要があるでしょう。

要するに、結局のところポイントは「父が姉にお金を渡していた証拠をいかに見つけ出すか」という点にあります。

この証拠が見つけられないためにあなたの主張が通らないという事態が生じているのです。

【父名義のローン残債務は分担】

父名義の住宅ローン残債務については、父の金融機関に対する債務ですので、相続人であるあなたと姉が相続分に応じて分割された債務を支払いする義務があります。

あなたは金融機関からの請求に応じざるを得ません。

【姉の家は遺産分割の対象にならない】

そうすると、父の遺産分割の結果、姉はローンを分割してあなたに半分負担させることができるが、姉は自宅を丸ごと自分のものにできるという利益を受けることになります。これはたしかに不公平感があることでしょう。

この点の解決方法としては、特別受益を主張することが考えられます。

父の債務である住宅ローンで融資された金銭はその全額が、売買代金の決済の時点で姉の代金の支払いに充てられているはずであり、この分は贈与として特別受益に該当する可能性があります。

裁判所がその点の立証ができていないといっているのであれば、その点を立証するよう全力を尽くされるといいでしょう。

現在、弁護士に依頼されているようですので、その立証方法としてどのようなものがあるかどうか、その弁護士と協議されるといいでしょう。

【不正な預金解約は調停・審判で判断しにくい】

最後に別途訴訟提起が必要と言われている点ですが、調停や審判は遺産であることが明らかな(ほぼ争いのない)遺産だけを取り扱う手続です。

そのため、不正な預金解約(損害賠償請求)のように事実関係に大きな争いがあるものは調停で判断ができないのが通常です。

その場合、別途訴訟を提起して遺産であることを確認することが必要であり、この点は裁判所の見解が一般的といえるでしょう。

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