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実例Q&A

使用貸借について【Q&A №613】

2018年8月2日


【質問の要旨】

使用貸借されている土地の相続と生前贈与

記載内容   使用貸借 相続 生前贈与

【ご質問内容】

使用貸借(無償貸与)されている土地を相続の時、使用貸借は承継するのに、

生前贈与の時、使用貸借(無償貸与)は承継しないのは何故でしょうか?

(生前贈与 を受けるのは相続人です。)

(はな)


 

 ※敬称略とさせていただきます

【使用貸借は貸主に対して請求できる債権】

今回の質問は、具体的な案件の相談ではなく、法律の理解のしかたについての理論的な質問で、以下の回答内容は難しいかもしれません。

 

不動産(土地)を例にとって説明します。

まず、建物の持ち主A(以下、Aといいます)が借主Bに貸す(使用させる)という契約をします。

この場合、借主Bとしては、契約の相手方であるAに対してのみ、建物を使用させよという請求が可能です(このような契約の相手方に対してのみ請求できる権利は「債権」と言います)。

賃料を取る賃貸借にせよ、無償の使用貸借にせよ、Bの持つ権利はAに対する債権になります。

【Aが他の人に所有権移転すると、Bは建物を使用できないのが原則】

Bは家を使用させよという権利を持ちますが、これはあくまでAに対して請求する権利です。

そのため、Aが他人(例えばC)に土地の所有権を移した場合には、BはCに対して建物をつかわせよという請求はできません。

これは賃貸借であっても、使用貸借であっても同様であり、BはCに使用させよということはできません。

Bとしては、土地を使わせるという約束に違反したAに対して、損害賠償請求をするしかないということになります。

 

【登記した物権なら、Cに使わせよということができる】

ただ、この土地を使用する権利を登記してもらうと権利が強くなります。

土地の使用権を登記すると、《地上権》という強い権利(物権と言います)になり、新しい所有者であるCにも土地を使わせよという請求ができます。

 

【土地や建物の賃借は、法律で強い権利になっている】

ただ、土地の使用権を登記までするということは少ないです。

建物を建てる目的の土地などは、Bの住居や店舗に利用されている場合が多く、所有者が変わる度に退去するというのでは社会が混乱します。

そのため、賃貸借である場合に限定して、法律(借地借家法)で、所有者が変わっても継続使用を主張できる(借地権という強い権利になっている)ことにしています。

 

【贈与の場合は、使用貸借の継続使用は不可】

AがCに贈与した場合、贈与に伴い、Cが所有者になります。

賃貸借であれば、前項の法律のおかげで、Bは引き続きの使用を主張することが可能です。

しかし、使用貸借の場合は、借地借家法の保護はなく、Bは土地を使用できないということになります。

 

【相続の場合】

贈与の場合には、(生きている)AとCは、親子であっても他人として扱われます。

しかし、Aが死亡して、相続が発生した場合、相続人Dは《法律上》はAと同一の人として扱われ、DはなくなったAの権利義務を引き継ぎます。

そのため、Aの負っていたBに土地を貸す義務を、Dは引き継ぎ、Bは退去する必要がないということになります(このような違いがあることから、売買や贈与は《特定承継》と言われ、相続は《一般承継》と言われ、区別して扱われます)。

このような所有権の移転が発生する原因の違いが、Cの退去の可否に影響しているため、使用貸借の場合、生前贈与では退去、相続では退去不要という結論になるということです。

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