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実例Q&A

実際の審理方法について教えて下さい【Q&A №639】

2019年3月4日

 


【質問の要旨】

不正出金についての訴訟における裁判所の判断

【ご質問内容】

相続時の使い込み訴訟の審理方法を教えて下さい。

問題の引出しは100回あるのですが、被告は「引出した事は認めるが、全額渡した。」と抗弁しました。

この場合、1回1回の引出しについて抗弁事由を立証していく訳ですが、100回のうち40回分だけ被相続人が引出しを依頼したメモなどがあったとします。

そうすると裁判官は以下のどちらの審理方法をとるのでしょうか?

①40回のメモがあるのだから、残り60回は「メモが残っていないけど、依頼があったと考える。」

つまり、一部の立証で、残りも立証できる。

②40回のメモがあったけど、残り60回は「その分は勝手に引き出したのではないか。」

つまり、一部を立証できたからといって、残りの部分も立証できたことにはしない。

639

(ララップ)

 ※敬称略とさせていただきます。

 

 

【裁判官がどのように考え、判決をするかはケースバイケースだが】

裁判官がどのような過程で判決の結論に至るかについては、それぞれの裁判官により異なります。

また、問題となる案件の事情、証明の程度によっても異なります。

そのことをわかっていただいたうえで、通常はこのようになるのではという、私(弁護士大澤)の個人的な見解を説明します。

【私が裁判官ならこう考える】

100回の出金のうち、40回については、指示についてのメモがあったということですが、それだけでは、裁判官が残りの60回についてどのように考えるかを判断するのは難しいです。

判決などお読みになると、《諸般の事情を考慮して》というような記載にお気づきになるでしょう。

これは、1つや2つの事実だけではなく、その他にも多くの事情を考慮していますということを裁判官が言っていると理解していいでしょう。

ただ、関連事実の中には《結果に重大な影響を与える事実》もあれば、それほどでもない事実もあります。

【問題点から見た重要な事実は何か?】

今回は《無断で引き出した》ということが問題になっていますので、そのような案件の問題点を整理しておきましょう。

 ① 無断で引き出したか?

 ② どういう使途に使われたか?

 ③ 引き出し額はいくらであったのか?

 ④ 被相続人に渡したという点をどう考えるか?

これらが、裁判官が注目するであろう事実です。

ところで、上記①と②、③、④はそれぞれが相互に微妙に関連します。

例えば、仮に無断で引き出したとしても、その払い戻し金の使途が被相続人のためであれば、それは被相続人の暗黙の了解があったと判断される可能性が高いでしょう。

しかし、他の40回にメモがあるのに、メモのない60回の出金が多額であるとすると無断出金の可能性が高いということになるでしょう。

また、被告は、被相続人に渡したという主張のようですが、もし、その渡したという点が証明されるなら、それは被相続人の暗黙の了解があったという風に判断される可能性が高くなります。

【その他の事情も関連する】

上記①~④が今回のような案件で重要な事実ですが、しかし、仮に被相続人が認知症ということになると、認知症の程度が重要な事実になってきます。

そのため、メモの回数だけでは、裁判官の判断はどちらにも行く可能性があるというしかありません。

【事実関係は複雑に絡み合う】

前項に述べたように、事実関係は複雑に絡み合っています。

そのため、どの点を重要な事実と見、また、その事実をどのように組み合わせて結論に至るのかは裁判官が独自に判断することです。

また、有利な事実や不利の事実が入り混じる中で、どのような事実を選択し、どのように組み合わせて説得力のある主張を展開するか、それが弁護士の能力です。

今回の件、相続に詳しい弁護士にいろんな事実を説明したうえで、意見(現在、弁護士がついているのならセカンドオピニオンになりますが)をお聞きになるといいでしょう。

そうすると回数だけでは結論がでるものではないということがお分かりになると思います。

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