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実例Q&A

生前贈与 「あなたに全部あげる」という母の言葉【Q&A №644】

2019年5月14日

 


【質問の要旨】

「あなたに全部あげる」という母の言葉は有効か

記載内容  通帳 介護 口頭での遺言

【ご質問内容】

末期がんを宣告された母から通帳とキャッシュカードと印鑑を渡され、これまで世話になった礼に私の家族に全てあげると言われました。

早くおろすように言われたのですが、毎日入院先で付き添いをしていたので、母が亡くなるまでにすべてをおろすことができませんでした。

母が亡くなった後、入院するまで数年顔も見せず、入院中も数回しか見舞いにこなかった長男が、相続財産を全て開示しろと言ってきました。

亡くなった後にまだ銀行に残っていた分は全ておろしたのですが、これは開示すべき相続財産となるのでしょうか?
この口頭での生前贈与分はどうなるのでしょうか?

家族に、ということだったので、主人名義の口座にすべて預金し、贈与税は主人名義で払おうと思っていました。

母は長男にないがしろにされていたことにずっと憤っており、とられないようにしなさいと何度も言われたのですが、私には荷が重いようです。

(阿倍野)

 ※敬称略とさせていただきます。


【こんなときこそ遺言書が有効に役立つのだが】

母が介護をしたあなたやその家族に財産をというのであれば、是非、遺言書を作るべきでした。

自筆でも母が遺言書を作っておれば、あなたは法律的にかなり有利な立場に立てました。

ただ、今になってはもう遅いという話になります。

以下においては、残念ながら、遺言書がなかったという前提で回答をせざるをえません。

【口頭での生前贈与は立証が難しい】

法律で言えば、口頭でも贈与は成立します。

ただし、そのような贈与発言があったという証明が必要です。

また、その発言が《一時的なもの》ではなく、母の真意に基づくものだという点も問題とされる余地があります。

もし、財産全部をあげるという話ならのなら、母は遺言書を作ったはずだという点も、長男が問題にするところでしょう。

「通帳とキャッシュカードと印鑑を渡された」ということもそれほど役には立たないように思います。

相手方としては、渡されたのではなく、勝手に持ち出したのだという主張をする可能性が強く、贈与の証拠としては決して十分なものではありません。

これらの点を考慮すると、贈与が認められるかどうか、かなり疑問がありそうです。

【死亡後に引き出した預金も相続財産である】

次に、あなたが母の死後に引き出した預金ですが、これは相続財産になりますので、遺産分割協議をしたのちに引き出すべきものです。

母が死亡していることを銀行が知ったのなら預金口座を閉鎖します。

おそらく贈与があったことを前提として、あなたとしては、死亡後にキャッシュカードで引き出されたのでしょうが、長男からいえば死亡を隠して預金を不法に引き出したと主張する可能性が高いと思われるケースです。

【開示する義務はないが・・】

被相続人である母が死亡した場合、あなたが長男などの他の相続人に遺産内容を開示することを命じる法律はありません。

そのため、長男が開示を求めても拒否されてもいいでしょう。

ただ、あなたとしては贈与を主張するのなら、《堂々とその遺産内容を開示すればよい、それをしないのはやはり取り込んでいたからだ》ということで長男の不信感をますます増大させることになります。

参考までに言えば、長男は相続人ですので、預貯金であれば、金融機関さえわかれば、独自に財産調査が可能ですし、取引履歴も取り寄せが可能だということは理解されておくといいでしょう。

【贈与が認められた場合にはどうなるか】

生前贈与が認められた場合には、あなたの生前贈与分は特別受益として遺産に持ち戻されて、遺産分割をすることになります。

【贈与が認められない場合にはどうなるか】

贈与が認められない場合、あなたが生前に払い戻しを受けた預貯金は不正出金になります。

母は、生前、あなたに引き出した金銭の返還請求権を有することになり、長男が法定相続分に応じて返還請求権を相続します。

そのため、あなたは引き出した金銭のうち、長男相続分に応じた返還義務を負うということになります。