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実例Q&A

遺産の9割以上が生命保険【Q&A №658】

2019年8月9日

 

【質問の要旨】

母の遺産は預金100万円と2000万円払込の生命保険のみ。

生命保険の受取人が相続人の一人であった場合、生命保険金も遺留分請求はできる?

 

【ご質問内容】

母が亡くなり、相続人は兄と弟である私の2人です。父は10年以上前に他界しました。

母は兄夫婦と同居していました。

兄と遺産分割の話し合いをした所、母の財産は100万円ほどの預金だけです。

しかし先日、母が2年前に加入した生命保険があることが分かりました。

金額は2000万円を一括で払込み、5年後に利子がついて戻ってくるものです。

そして保険金の受取人は兄になっていました。

ネットなどで調べると、保険金は相続財産に含まれないと知り、遺産分割できないと知りました。

生前贈与や、遺贈ならば遺留分請求もできるのに、それが保険金となると、遺留分請求ができないのではないかと不安です。

額も大きいので、何か方法があれば教えて頂きたいと思って相談しました。

このように、被相続人が死亡の数年前に加入した保険の保険金が、相続人の一人を受取人と指定した場合は、遺留分請求の対象にはできないのでしょうか?

 

 

 

 
(モニモニ)

 ※敬称略とさせていただきます。

 

【生命保険は遺産ではないとする見解が一般】

今回は相続人に残された財産の9割以上が生命保険金であり、いわゆる法律上の「遺産」がほとんど残っていないケースのようです。

生命保険は遺産ではありませんので相続人で分割することなく、受取人になった方全額受け取ることができます(生命保険が遺産に当たらないことについては当ブログ№598参照)。

【特別受益では解決できない・・・】

もっとも、裁判例の中には、相続人の一人が遺産総額の5割を超える多額の死亡保険金を受け取った場合に、特別受益に準じて遺産に持ち戻しを認めるものがあります(最高裁判決平成16年10月18日。相続ブログ№598参照)。

いわば保険金を生前贈与と同様に扱った判例だと理解すればよいでしょう。

しかし、特別受益は生前贈与した財産(今回は生命保険金)を返還させる制度ではありません。

あくまで現存する遺産(今回は預金100万円)の分け方について、生前贈与を考慮するにとどまります。

そのため、保険金が特別受益であることを主張しても、あなたは現存する預金100万円を相続できるだけであり、これを超えて生命保険金の返還請求はできません。そうすると、本件では特別受益を主張してもなんの解決にもならないでしょう。

そのため、今回は生前贈与や遺贈があっても相続人を保護する制度である「遺留分」を主張するしかありません。

【保険金は基本的に遺留分の対象外】

それでは、生命保険金は遺留分減殺請求の対象財産になるのでしょうか。

まず、生前贈与や遺贈なら遺留分減殺請求の対象となりますので、贈与された金銭の一部を返還するよう請求できます。

しかし、生命保険は(理屈上)生前贈与でも遺贈でもないため、遺留分減殺請求の対象財産には含まれないのではないか、ということがかつて争われました。

この問題について最高裁判所は、死亡保険金は遺留分減殺請求の対象財産に含まれないとしました(最高裁平成14年11月5日判決)。

もっとも、この判例で生命保険金を受け取ったのは相続人ではない第三者の方でした。そのため、今回のように相続人が保険金受取人であった場合とは状況が違います。むしろ、相続人の一人を特別扱いするという意味では生前贈与や遺言で財産を渡したケースと大きな違いはないでしょう。

そこで、あなたとしては、今回受け取られた生命保険金(2000万円)が現存する遺産(預金100万円)の20倍にもあたるという金額の大きさを繰り返し強調し、「このような生命保険を使った遺留分の抜け穴を認めるべきではない」と主張されるべきでしょう。

【今後の方針】

あなたが行うべき主張は上記のようなものですが、この問題は裁判所の判断も学説も意見が分かれていますので、現状で確かな回答ができる問題ではありません。

そこで、相続案件に詳しい弁護士に相談され、上記の主張を含めた法的な検討を早急に進めていくべきでしょう。

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