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実例Q&A

遺言無効判決に必要な証拠【Q&A №292】

2013年7月2日


 

【質問の要旨】

長男が自分に有利な遺言を母に書かせた。

母は要介護3だったが、遺言無効の判決は得られるか。

【ご質問内容】

現在私は、公正証書遺言を無効とする判決を得たく努力しています。

その公正証書遺言は以下のような手順で作成されたようです。

90歳を越えたひとり暮らしの母に長男夫婦が自分たちに極めて有利な遺言を書かせるために母を公証役場に連れて行きました。

証人2名は母の甥夫婦で安心させ予め権利書で主たる財産である母の土地建物を自分たちに相続させる内容となっています。

さて本件公正証書遺言の母は要介護3に認定されたばかりで前記夫婦の力をかりなければ立ち上がることも歩くことも出来ない状だったと思います。

このような状況で本当に自分の自由意思を以って遺言書を書いたかどうか非常に疑問に思っています。

介護3の認定記録の他にどのような物的証拠があれば遺言無効の判決が得られるか教えてください。

よろしくお願い致します。

(キータン)



【要介護3でも遺言を作成することはできる】

要介護3の人でも、それが身体的な理由であれば、遺言をすることが可能です。

遺言で問題となるのは、物事を認知し理解して判断を下す能力(意思能力といいます)であり、足腰が弱っていたこととは全く別物だからです。

例えて言えば、車いすのお年寄りの方でも意識の明確な方は多数いらっしゃるということです。

【カルテの取り寄せを検討する】

遺言を無効にできる場合とは、次の2つのうちのどちらかである場合が多いです。

① 遺言の偽造など、遺言が本人の意思に基づいていない。

② 遺言者に意思能力がなかった。

今回の質問では公正証書遺言ということで、偽造ということはないと考えられますので、②の問題となります。
この意思能力の判断では、カルテなどが参考になります。

お母さんが入院していたのなら、そのカルテを取り寄せして、記載内容を確認しましょう。

また、通院していた場合でも、念のためにそのカルテを取り寄せしましょう。

カルテにはお医者さんの所見や看護師の病状記録など、当時のやりとりや健康状態が詳しく記載されており、当時の意思能力を知る上で大変重要な資料として裁判所も重視します。

【認知症の検査結果が重要です】

最大の決め手となるのが認知症の検査結果です。

この検査にはいくつかの方式があるようですが、著名なところでは長谷川式認知スケールという検査方法があり、この検査を当時行っていればその検査結果が重要な証拠として扱われるでしょう。

【コラム】意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介もご参照ください。)

この検査は病院などで行われ、結果はカルテなどとともに保存されていることがあります。

このほか、介護施設によっては、長谷川式認知スケールを定期的に行っているところもありますし、介護施設への入所の際の参考記録として実施しているところもあります。

そのため、当時お母さんが入院・通院をしていた医療機関や介護施設などに問い合わせてそのような記録がないか調査してみることをお勧めいたします。

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