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遺言書の内容を前提とした遺産分割の行方【Q&A No.732】

2021年9月10日

【質問の要旨】

・2020年に父が死亡

・前日に、家族の目の前で自筆遺言書を作成し、封をした

・遺言書の内容は全財産を母に相続、遺言執行人は母

・遺言書を作成した際、頭ははっきりしていたと医師や看護師が認めている

・相続人は3人(母、兄、相談者)。全員が遺言の内容と違った遺産分割に合意したので、検認は行わず遺言書は未開封

・後に家族の争いになってしまっため、やはり遺言を使おうかと考えている

・2020年に相続人全員で司法書士に相談し、遺言書があることを話題にあげている

・税理士には遺言はないということになっている

 

・これから検認をして遺言を使うことは法的に問題があるか

・遺言がないことにして家庭裁判所で調停を始め、進捗状況によっては遺言があったことを伝えるのは問題があるか

・遺言の内容を知ってから1年以上経っているので、遺留分の請求は時効のはずだが兄が「知らなかった」とシラを切ったら

 遺留分を払わないといけないのか(司法書士の証言が得られるかもしれない)

・遺言の有効性について兄に訴訟を起こされたら、勝率はどのくらいか

・今から配偶者控除等の特例が認められるためには、どうしたらいいか

 

 

 

 

【回答の要旨】

・遺産分割の合意が成立していれば、遺言書を使えない

・一方、遺産分割の合意が成立していない場合、遺言書を使うことに問題はない

・遺産分割調停の手続き中に遺言書を持ち出した場合、兄から遺言書の内容を前提とした遺産分割の合意があることを指摘される可能性がある

・兄が遺言書の内容を知っていた時点を立証できるのであれば、兄からの遺留分侵害額請求に対し、時効を援用できる

・遺言の有効性については署名押印、日付等の形式的な要件を満たしていないなどの問題がない限りは認められるのではないかと思われる

・配偶者控除の特例については適用されると考えられる

 

【題名】

遺産分割トラブル、遺言について

 

【ご質問内容】

2020年の死亡前日に父が自筆遺言書を家族の目の前で書き、封をしました。

「全財産を母に相続させる。遺言執行人は母」というものです。

肉体的には遺言を書くのも大変でしたが、頭ははっきりして医者や看護婦もそれは認めています。

そのような経緯で、相続人3人は遺言の内容を知っておりましたが、違った遺産分割をすることに合意し、家庭裁判所での検認は行なわず未開封です。

2020年に相続人全員で司法書士に相談し、遺言があるということは話題にあがっています。

税理士には遺言はないということになっています。

その後、家族の争いになってしまい、やはり遺言を使おうかという考えが出てきました。

 

1.これから検認をして遺言を使うことは法的に問題がありますか。

2.遺言はないことにして家庭裁判所で調停を始めたあとで進捗状況をみて、場合によっては、実は遺言があるので使いたいと言うのは問題がありますか。

3.遺言の内容を知ってから1年以上たっているので遺留分の請求は時効のはずですが、兄にそれを「知らなかった」としらを切られたら遺留分を払わなくてはならないのでしょうか。(司法書士の証言はもしかして得られるかもしれません)

4.遺言の有効性について兄に訴訟を起こされたら、勝率はどのくらいでしょうか。

(死の前日だったため)

5.今から配偶者控除等の特例が認められるためには、どうしたらいいですか?

(ゆみこ)


 ※敬称略とさせていただきます。

 

【回答】

1.遺産分割の合意が成立していれば、遺言書を使えない。

今回、相談者を含む相続人は遺言の内容を知っており、その内容を前提として遺産分割の合意をしています。

法律的には、遺言の内容を前提として相続人全員で合意をした場合には、その内容が遺言書と異なっていても、遺産分割協議が成立します。

そのため、今回のケースでは遺言書を使って既に成立した遺言書の効力を覆すのはむずかしいでしょう。

 

2.一方、遺産分割の合意が成立していない場合、遺言書を使うことに問題はない。

今回、遺産分割についてはその後相続人間で争いになっていることからすると、遺産分割の合意が成立する段階まで至っていない可能性もあります。

その場合、遺言書の内容は遺産分割の合意によって覆されていないため、遺言書は依然として使うことができるということになります。

そのため、このような場合であれば、相談者としては、家庭裁判所に遺言書の検認の申立てをすることが可能です。

 

3. 遺産分割調停の手続き中に遺言書を持ち出した場合、兄から遺言書の内容を前提とした遺産分割の合意があることを指摘される可能性がある。

仮に、相談者が遺産分割調停の申し立てをして、その手続きの途中に「実は遺言書があるので使いたい」という形で遺言書を持ち出した場合、兄からは遺言書の内容を相続人全員が知っていたことを指摘される可能性があります。

 相談者が2020年に相続人全員で司法書士の下へ相談に行っていることからしても、兄が司法書士にそのことを供述してもらった場合、遺言書の内容を知った上で遺産分割の手続きを進めようとしていたということが明らかになると思われます。

 その場合、

 

4.兄が遺言書の内容を知っていた時点を立証できるのであれば、兄からの遺留分侵害額請求に対し、時効を援用できる。

今回、相談者の兄が遺言の内容を実際に知った時からは1年以上が経過しているため、時効が成立しています。

 相談者は、2020年に相続人全員で司法書士の下へ相談に行っており、遺言書があるという話をしているため、兄が遺言の内容を知った時から1年以上経過しているという点については、司法書士に供述をしてもらうことで立証が可能ではないかと考えられます。

 そのため、相談者は兄の遺留分侵害額請求に対し、時効援用の主張ができると考えられます。

 

5.遺言の有効性について。

被相続人が自筆証書遺言を作成した当時、頭がはっきりしており、医師や看護師もそれを認めていたということですので、意思能力には問題がなかったものと思われます。この点については、カルテや看護記録を取り寄せることで明確に立証することができます。

そのため、遺言の有効性については署名押印、日付等の形式的な要件を満たしていないなどの問題がない限りは認められるのではないかと思われます。

 

6.配偶者控除の特例については適用されると考えられる。

配偶者控除の特例(正式には「配偶者の税額軽減」といいます。)を受けるためには、遺産分割が確定しているなど、配偶者の相続分が確定していなければなりません。

ただ、遺産分割が済んでいない場合であっても、申告期限までに未分割で申告し、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付することで、例外的に配偶者控除が適用されることがあります。

今回の相談では、相続開始から相続税の申告期限である10か月以上をすでに経過していますが、税理士が関与していることから、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しているものと思われます。

 というのも、今回のようなケースで税理士が上記分割見込書の提出を失念した場合は、損害賠償責任を負うとされているためです。

したがって、相談者は配偶者控除の特例を受けることができると考えられます。

ただし、万が一、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出していないのであれば、配偶者控除の特例は適用されないものと思われます。

(弁護士 山本こずえ)

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