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【相続判例散策】相続欠格と債務の承継(仙台地裁判決 昭和63年5月31日)

2013年10月30日


相続債権者から債務請求をされた場合に、相続欠格を理由に拒むことが許されるか? (昭和63年5月31日 仙台地裁判決)

記載内容  民法891条 相続欠格 殺害 相続債務

【事案の概要】
・・・理解しやすくするために、内容を単純化しています。

 被相続人Aが死亡した。
 これは、兄弟B及びCが共謀して、Aを殺害したものである。
 相続人はBとC、D、E、Fの5名であった。
 債権者甲は被相続人Aに対する貸金債権を有していた。
 貸金債務は相続人である兄弟BとCにも相続(承継)される。
 そのため、債権者甲は相続人である兄弟を被告として貸金返還訴訟を起こした。
 裁判で、相続人であるBとCは、《自分達は民法891条1号の相続欠格者であるから、相続人ではなく、債務支払義務はない》と主張した。
 さて、このような主張は認められるか。

【参照条文】

第891条(相続人の欠格事由)
次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

【判決の概略】
 BとCは、Aを殺害したので、Aの相続については相続欠格者であるというが、BとCにはこのような主張をする資格(主張適格)がない。
 民法891条の相続欠格の条文は、同条に記載した者及びその承継人が相続権又はこれに基づく権利の主張をするのを封ずるためのものである。
 したがって、相続欠格の主張をなしうるのは、相続人であるBとCが相続権を主張する場合に、これを否定する立場の者が主張できるのである。
 相続欠格の制度は、本件のように、右非行をした者自身もしくはその承継人が相続した義務を免れるために利用しうる制度ではない。

 このことは、例えば詐欺又は強迫によって包括遺贈をさせた法定相続人が、遺言者の負っていた債務の履行を求められた場合に、自分は相続欠格者であると主張する事例を考えれば、容易に理解可能であろう。
 なお、本件の特殊事情として、Bらは、Aの積極財産につき、同人を被相続人、Bを相続人とする相続登記手続をしていることをも考えれば、BとCの主張は不当なことが明らかであろう。

【弁護士コメント】
 BとCは、被相続人Aを殺害している。
 但し、刑事判決では執行猶予がついたという。
 通常、殺人事件に執行猶予がつくのは異例中の異例であるから、BとCにはよほど有利な事情があったのであろう。
 それはさておき、本件ではBとCは、Aの遺産(積極財産)は相続しながら、Aの相続債務を請求されると、自分はAを殺害しましたから、相続欠格者であって、債務は支払いをしませんというのである。
 もらうべき相続財産はもらうが、相続債務(借金)は支払いをしないというのである。
 しかもその理由として、私たちはAを殺害したからというのである。
 誠に身勝手な主張というべきだろう。
 相続欠格は、非行した者に相続する権利を与えないという制度であって、債務の履行を免れるための制度ではないから、判決は極めて妥当というべきであろう。

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