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実例Q&A

母の財産管理をしていた長女の使い込み【Q&A No.749】

2022年2月28日

【質問の要旨】

・母が昨年死去

・相続人は長女と長男(父と次女は先に死去)

・母が認知症を発症後、長女が母の通帳等を管理し、母名義の定期預金等を解約して着服(、長女名義の貯金に入金:合計約2500万円)

・母は存命中、相談者(長男)の独身時代の金融資産(1000万以上)を管理し、毎年、残高、運用実績を記録していた

・母の死後、長女に対し、「金融資産」の返却と母の預貯金の使途と残高を説明するよう求めた

・しかし僅かな残高の通帳と、長女直筆の鉛筆下記の残高メモのみを開示、他の資料提出や説明は拒んだ

・その後、長女が代理人弁護士を通じて、「現在の金融資産の残額で折半する」と通知してきた

・長女の行為は窃盗、または横領に当たるのではないか

・今後どのように対処すべきか

 

 

 

 

【回答の要旨】

・まず、長女の弁護士の一方的な通知は拒否するといい

生前に母の口座から長女が勝手に出金し、着服していたことを主張するなら、それを証明する必要がある

・金融資産から多額の出金がないかも確認する

・長女の行為は刑法に該当するが、親族間の窃盗などは処罰しないと定められている

・この種の案件は、証明も難しい点もあり、又、訴訟必至の場合も多いので、早い段階で弁護士に相談され、必要に応じて事件の解決を依頼するといい

【題名】

母が存命中に私が預託した金融資産と母の遺産を姉が使い込んで返済しない

【ご質問内容】

母が昨年8月に死去し、相続人は、長女と長男。(父:平成15年死去、次女:令和2年死去)

母が平成24年夏に認知症を発症後、長女は「母から財産管理を託された」といい、通帳と印鑑、資金管理簿を入手。

直後に、母名義の定期預金(約200万円)と国債(約300万円)を解約後も定期預金2件(約2,000万円弱)を解約し、いずれも長女名義の貯金に入金した。

長女は、共同介護者で事情を知る次女に300万円を分配していた。母は、存命中、私(長男)の独身時代の金融資産(1,000万円以上)を管理し、毎年、残高、運用実績を記録していた。

母の死後、遺産分割協議の前に、長女に対し、「金融資産」の返却と母の預貯金の使途と残高を説明するよう求めたが、僅かな残高の通帳と長女自筆の鉛筆書きの残高メモ(A4判3枚)のみを開示しただけで、他の資料の開示、詳しい説明を拒んだ。

長女は、令和4年2月になって代理人(弁護士)を通じ、「現在の金融資産の残額で折半する」という条件を一方的に提示して「受諾しないなら、他条件での協議には一切応じない。裁判や調停は厭わない」と通知してきた。

長女の行為は、「窃盗」または「横領」行為に当たるのではないかと

考える。私が母に預託した金融資産を無断で使い込んだが、使途も残額を明らかにせず、返済もしないことは納得できない。

今後、どのように対処すべきかご教示願いたい。

(こべっこ)


 ※敬称略とさせていただきます。

 

【回答】

1 まず、生前の取り込み分の証拠を集める

まず、長女の弁護士の一方的な通知は拒否されるといいでしょう。

次に生前に母の口座から長女が勝手に出金し、着服していたことを主張するなら、それを証明する必要があります。

そこでだれが手続きをしたのかも問題になりますが、特に重要なのはその出金した金を誰が取得したかです。

取得したのが長女であれば、仮に母が出金手続きをしていても、母からの生前贈与として、その金額を特別受益として遺産に持ち戻して、遺産分割をすることができます。

証明の方法ですが、口で主張しても説得力はありません。

書面などの証拠を集める必要があります。

いつ、いくらを出金したのかを確認するには、金融機関等から取引履歴(入出金履歴)を取り寄せする必要があります。

相続人であれば照会が可能ですが、原則として照会をした時点から遡って10年間しか取り寄せができませんので、取込時期が古いのであれば迅速に照会する必要があります。

次に取り寄せをした履歴で多額の出金があれば、その解約や出金手続を母がしたのか、長女がしたのかを確認する必要があります。

そのためには払戻伝票等の出金の際に作成される書類を取り寄せされるといいでしょう。

一番欲しいのは、出金された金が長女の口座に入金しているという証拠です。

この点を証明するのは長女の預金口座の履歴ですが、もし可能なら、是非とも入手されるといいでしょう。

ただ、これは被相続人の母の口座ではなく、他人の長女の口座ですので、開示をしてくれる可能性は低いでしょう。

もし、長女が口座を開示しないのなら、母の取引履歴を確認して、送金されているかどうかを確認しましょう。

もし、送金されているのなら、どの金融機関の誰の口座に送金されたかを金融機関に照会されるといいでしょう。

この場合は被相続人である母の預金の動きの調査ですので、相続人でも照会が可能です。

それにより、長女が取り込んだか否かが判断できます。

 

2 金融資産から多額の出金がないかも確認する

長女は預金の取り込みをしているということですので、同じようなことを金融資産でもしている可能性があります。

そのため、母の取引していた証券会社等に取引履歴の照会をされるといいでしょう。

取引履歴を見て、多額の出金がなされているかどうかを確認しましょう。

もし、そのような出金があるのなら、その手続きが誰によってなされたのか、又、その出金された金が誰の口座に送金されたかを確認する必要があります。

もし、長女の口座に入金されているのなら、母が長女に生前贈与をした可能性があります。

特別受益を主張して、出金分を遺産に持ち戻して、遺産分割をするといいでしょう。

 

3 長女の行為は刑法に該当するが・・

長女の行為は「窃盗」または「横領」行為に当たるとのご指摘があります。

その可能性は否定できません。

しかし、窃盗や横領行為の処罰を定めた刑法には、親族相当例(第244条、第255条)があり、親族間の窃盗などは処罰しないと定められています。

本件は母と子という親族間で発生したものであり、上記条文があるため、処罰はされません。

警察が捜査に動くことはまずないと考えられるといいでしょう。

 

4 弁護士に相談することも選択肢

いずれにせよ、生前に相続人の一部が遺産取り込んでいるケースでは、その相続人が取込を認めない限り、証明が必要になります。

長女の弁護士が、「現在の金融資産の残額で折半する」という姿勢を示していること、又、長女が要求する資料を提出しないことを考えると、調停や訴訟なしの円満な解決はむずかしい案件だと思います。

この種の案件は、証明も難しい点もあり、又、訴訟必至の場合も多いので、早い段階で弁護士に相談され、必要に応じて事件の解決を依頼するといいでしょう。

(弁護士 大澤龍司)

 

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