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実例Q&A

生前出金と遺産分割【Q&A No.755】

2022年5月11日

【質問の要旨】

・母の遺産相続は、分割協議書に則り終わっている

・相談者は母が他界する前に、母名義の口座から560万円引きだしている

・相続人である妹が、560万円の半分の280万円を払えと、代理人弁護士を通じて要求してきた

・分割協議書は双方合意を得たもので、「今後新たに出た遺産は1/2を前提に協議する」の項目に該当すると主張

・生前、妹の進言に賛同し引きだしたお金であり、主に葬儀費用や母の生計費等にしようしていて雑談の範囲でも伝えている

・母は1990年から1人で居住。痴呆が出だした2012年からは相談者と食事、生計を共にし1人で居住継続

 2015年~他界までは養護施設にいた

・相談者の考えでは支払う必要はないと思っているが、どうするのが最善か

 

【回答の要旨】

相談者が引き出した被相続人母の預金560万円が、母の遺産になるのかどうかが問題となる

・引き出した金銭を全て母のための費用に使ったのであれば、遺産にはならない

・引出金が議論の対象にもなっていなかったというのであれば、《新たに出た遺産》ものに準じて、遺産分割協議をせざるを得ない

 

母の遺産相続は、分割協議書に則り終わっていますが、もう一人の相続人である妹が、他界する直近に、私が、母の口座から引き出した560万円について、「今知ったから」と嘘を言い、2分の1の280万円を支払えと、代理人弁護士を通じて要求してきました。分割協議書は、私が作成し双方で合意を得たもので、「今後新たに出た遺産は1/2を前提に協議する」の項目が記載してあり、これに該当する遺産だと主張しています。

しかし、生前に「お金を引き出した方がいい」と進言したのは妹であり、それに賛同し引き出したことや、概ねの金額や使途(葬儀費、母の生計費、母宅の維持、修理費)は伝えていたため(雑談の範疇)、理解されていると思い、協議中も特に質問もなかったので、分割協議書には載せませんでした。

今になって、生前に引き出した現金は知らなかったと嘘を言って要求され困っています。

母は、私の家から約30m位離れた戸建てに、1990年から1人で居住。健全時は自立。痴呆が出だした2012年~食事、生計を私と共にし1人で居住継続。口座も管理、ショートやデイサービス利用。2015年(要支援2)~2017年3月他界までは介護施設。

私の考えでは支払う必要ないと思っていますが、どうするのが最善でしょうか?弁護士への相談も考えています。

どうぞ、よろしくお願いします。

(まさか自分が)

 

 


 ※敬称略とさせていただきます。

 


【回答】

1.母のために使ったなら返還は不要で、遺産にはならない

まず、相談者が引き出した被相続人母の預金560万円が、母の遺産になるのかどうかが問題となります。

仮に母の預金を引き出しても、その引き出した金銭を全て母のための費用に使ったのであれば、母には何ら損害はなく、又、相談者にも利益もありません。

そのため、母が相談者に請求する権利はなく、引き出しに関係する金銭の動きは遺産にはなりません。

ただ、母のために使ったという証明は、預金を引き出した相談者の側でする必要があります。

母の生計や自宅の維持修繕に使ったということが証明できる領収書などの資料を探しておく必要があるでしょう。

なお、一部しか母のために使っていないというのなら、残りは遺産になる可能性が高く、妹から請求されれば、相続分に応じた支払いをすることが必要になります。

2 遺産分割協議の関係

母の遺産については妹との間で遺産分割協議書が作成されています。

その協議の際に、相続人間で引出金の扱いが問題になったのであれば、この引出金についても遺産分割協議で話し合いがついており、妹からの新たな請求はできないということになります。

もし、全く問題ならずに遺産分割協議がされたのであれば、再度、引き出し分いついての遺産分割をする必要がありそうです。

本件の、遺産分割協議書には《今後新たに出た遺産は1/2を前提に協議する》という条項が入っています

相談者の立場からは、妹は引出金については知っていたのであり、《新たに出た遺産》ではないという主張をすることも考えられます。

しかし、引出金が議論の対象にもなっていなかったというのであれば、《新たに出た遺産》ものに準じて、遺産分割協議をせざるを得ないでしょう。

(弁護士 岡本秀樹)

 

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