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実例Q&A

相続放棄と非上場株式【Q&A №630】

2018年11月13日

 


【質問の要旨】

株主の過半数が相続放棄した株式

【ご質問内容】

父が他界しましたが、多くの債務及び債務保証があり相続人全員が相続放棄をしました。

父は生前、父が代表取締役を務める非上場会社の株式を60%所有していました。

現在長女である私が父に代わって経営を続けておりますが、父の死亡後私及びその他の取締役3名の任期は切れています。

私が代表取締役に就任し経営を続けていきたいと考えていますが、私たち3名の取締役の重任及び私の代表取締役選任のためにどのような手続きを行えばよろしいでしょうか。

630

(あい)

 ※敬称略とさせていただきます。

 

 

【相続放棄した場合の会社株式の保有者は誰か?】

まず、法定相続人全員が相続放棄をした場合、会社の株式は誰のものになるのかを説明します。

父が持っていた株式は誰にも属さないという状態になります。

このままでは誰も株式を保有しておらず、株主としての権利を行使できません。

【会社の経営は誰がするのか?】

これまでは、父が会社の社長(代表取締役。以下、社長といいます)だったのでしょうが、その死亡で社長がいなくなります。

このままでは社長不在となり、会社経営に支障が出ます。

そのため、早急に社長を選任する必要があります。

また、取締役の任期も満了しているということですので、新たに取締役を選任する必要もあります。

【取締役、社長の選任の原則】

ご存知だと思いますが、取締役は株主総会で選任されます。

また、代表取締役は新たに選任された取締役で構成される取締役会で選任することが必要です。

【今回の場合、総会は開催できません】

ところで、現状の株主構成では取締役を選任する株主総会は開催できません。

なぜなら、総会を開催する場合には株式の過半数を保有する株主の出席が必要です(定足数といいます)が、父の60%の株式は相続放棄で宙に浮いた状態になっており、権利行使できません。

そのため、残りの40%では総会は開催できないということになります。

【やむを得ない暫定的な措置として取りうる手段】

取締役の任期が満了したが、新たに取締役を選任されない場合には従来の取締役が、引き続き取締役としての任務を果たすことになります。

(参考条文)
会社法 第346条(役員等に欠員を生じた場合の措置)
1.役員(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役又は会計参与。以下この条において同じ。)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。(後略)

代表取締役の選定は、取締役会ですることになるので、(既に任期が満了した)取締役で取締役会を開催し、代表取締役の選定することになります。

あなたが取締役でとしての権利義務を引き続き有するならば、取締役会で自ら選定されることができます。

しかし、あなたが取締役ではなかったとすれば、あなたが代表取締役になることはできないので、ご注意ください。

【遺産株式の処理は相続財産管理人がする】

今後、法律的に問題のないように会社を運営するには、父の株式をあなたあるいはその他の会社関係者が取得する必要があります。

取得のためには、家庭裁判所に相続財産管理の選任の申請をし、その選任された財産管理人から株式を買い受けることになります。

相続財産管理人の選任のためには約90万円の予納金(裁判所に納める金銭)が必要であり、また、株式の取得のための買い取り価額(財産管理人との交渉になる)の支払いが必要であることにご注意ください。

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