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実例Q&A

親族相盗例における相続放棄【Q&A №616】

2018年8月30日

【質問の要旨】

横領した父の相続放棄

【ご質問内容】

先日、叔父が経営する企業(株式会社)で働く父が、会社のお金を横領した後、お金を使わずにそのまま病気で亡くなりました。

生前の父の行いを考慮し、私は相続放棄をする予定です。

父は過去に離婚しており、相続人候補は叔父のみですが、その叔父も相続放棄をしようと考えている所です。

このようなケースにおいて、叔父は横領分のお金を父の銀行口座から取り戻すことができるのでしょうか。

一見すると、叔父が相続放棄を選んだ時点で、父の横領分のお金も放棄しなければならないように思いますが、そのお金を本来受け取る権利を有するのは叔父の会社ですので、叔父にとってあまりにも酷ではないかと思い、実際どのように考えるべきなのかをご教示頂きたく質問させて頂きました。

(マサムネ)

※敬称略とさせていただきます

【損害賠償請求権は会社が有する権利】  

まず、お話を整理しますと、あなたの父は会社(法人)のお金を横領したまま死亡されたということですので、あなたの父に対して損害賠償請求を有するのは会社です。

つまり、会社だけが、あなたの父に対して、横領されたお金を取り戻す権利を有しています。

叔父(個人)ではありません。  

ここは区別が難しいのですが、被害者は会社(法人)であることをまずご認識下さい。

【横領の責任は現在、叔父が引き継いでいる】

他方で、本来なら横領の損害賠償責任は父の相続人であるあなたが相続します。  

ただ、今回はあなたが相続放棄をされるようですので、その場合、残された唯一の兄弟である叔父があなたの父を相続します。  

その結果、叔父(個人)が会社(法人)に対する損害賠償責任も相続する、という状態になります。

確かに、叔父は自分の経営する会社のお金を横領されたという点で被害者ですので、被害者である叔父が損害賠償責任を負うのは少し変な状況ですが、法律上はこのようになります。

【叔父は相続人として預金の払い戻しができる】  

この状況下であれば、叔父(個人)はあなたの父の相続人として、権利を行使して、義務を履行することができます。

具体的には、叔父は、銀行に対し預金の解約・払戻などの相続手続を取ることができます。

他方で、あなたの父の横領の責任として、会社(法人)にお金を返すこともできます。  

元々は被害者の立場であった会社の代表者である叔父が責任を取る、というのは非常におかしな話ですが、実際上、横領されたお金を取り戻すにはこれがもっとも簡易な方法と思われます。

(厳密には、あなたの父がほかの借金をしていた可能性も考えられますので、ほかに負債がないことを確認ができるまで預金に手を付けない方がよいでしょう。)

【叔父も相続放棄した場合は相続財産管理人の選任】  

他方で、この状況から叔父も相続放棄した場合、相続人は不在の状況になります。  

その場合、誰もあなたの父の相続預金を解約することができないため、叔父の会社(法人)は、横領されたお金の回収ができません。  

この状況であなたの父から横領のお金を返してもらうには、会社から家庭裁判所に相続財産管理人の選任申し立てをし、選任された相続財産管理人に対する交渉や裁判を行っていく必要が出てきます。

ところが、これには裁判を行う手間はもちろん、一般に90万円前後の予納金を裁判所に納めて選任申し立てをすることになるため、非常に負担が大きく、あまりお勧めできません。  

そのため、(ほかの負債の有無にもよりますが)叔父が相続放棄するべきかどうかは慎重な判断が必要でしょう。

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