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実例Q&A

遺産分割後の贈与に税金はかかってしまうのか【Q&A772】

2022年7月28日

【質問の要旨】

・母が死去

・相続人は父、姉、相談者の3人

・遺産は預金のみ

・法定相続通りに分割することを合意したため、遺産分割協議書は作成していない

・父50%、姉と相談者25%ずつで分割が完了したが、父が自分の分を姉と相談者で分けてほしいと言い出した

 

・すでに遺産の振込は完了しているため、父の分を口座から引き出して分けた場合、

 贈与税などの税金はかかってしまうのか

 

 

 

【回答の要旨】

・遺産分割協議は、口頭で行っても成立することから、今回のケースでも、遺産分割協議は成立していると考えられる

・父が遺産分割協議により取得した分を相談者と姉で分けることについては、贈与税の対象となるのが通常

・年間110万円までであれば、贈与税の基礎控除となるため、贈与税はかからない

・生前贈与をした場合と贈与せずに相続まで待った場合、どちらの方がより税金が安くなるか一度税理士に相談した方がよい

神奈川県に住むNと申します。

3月に母が亡くなりました。

法定相続人は父と姉、私の3人で、遺産は銀行預金のみです。

相続手続きをする際、父と姉とは法定相続分通りに分割することを口頭で合意したため、

遺産分割協議書は作成せず、銀行に銀行指定の相続手続依頼書や法定相続関連図、印鑑証明等を提出し、

父(50%)、姉と私(25%づつ)の3人に振り込むよう依頼しました。

ところが、銀行から振り込まれた額を見た父が、自分には十分お金があるので、

姉と私で全てを分けて欲しい言い始めました。

母の遺産は既に父の銀行口座に振り込まれてしまっているのですが、

これを引き出してもらって、私と姉で分けた場合、

贈与税等などの税金は掛かってしまうのでしょうか?

【ニックネーム】

N

 

【回答】

第1 遺産分割協議のやり直しについて

1 口頭での遺産分割協議

今回のケースでは、母の相続について、相続人である父、姉、相談者の3人が口頭により、法定相続分で遺産を分割するとの協議をしており、銀行に対しては、相続手続依頼書や法定相続関連図などを提出していますが、この時点で遺産分割協議は成立しているのか問題となります。

この点については、遺産分割協議は、口頭で行っても成立することから、今回のケースでも、遺産分割協議は成立していると考えられます。

そうすると、父が遺産分割協議により取得した分を相談者と姉で分けることについては、贈与税の対象となるのが通常です。

2 税務署から把握される可能性

もっとも、遺産分割協議が成立しているとしても、遺産分割協議書を作成しておらず、税務署など外部から把握できなければ、今回の父の取得分を相談者と姉で分けたとしても、贈与税は課されないと考えられます。

そうすると、銀行へ提出している手相続手続依頼書や法定相続関連図、あるいは預金の振込状況から遺産分割協議が成立していることを把握される可能性が問題になりますが、この点については、相続財産の金額が極めて大きいなどの事情があれば別ですが、把握される可能性は低いのではないかと思われます。

3 税務署から把握されていた場合

遺産分割協議が既に成立していたことが、税部署などに把握されている可能性に備えて、念のため、遺産分割協議のやり直しをすることが考えられます。

具体的には、相続人全員で、既に成立している遺産分割協議について合意解除を行い、父の取得分についてはゼロにして、残りを姉と相談者で分けるようにやり直しをすることが考えられます。

また、既に母の相続分について相続税の申告をしている場合は、修正申告あるいは更正請求の手続が必要となります。

 

第2 遺産分割協議のやり直しをしない場合

今回のケースで、遺産分割協議の合意解除などのやり直しをしない場合、既に成立した遺産分割協議により取得した分を父が相談者と姉に分けるということになるため、原則として贈与税がかかることになります。

この場合、年間110万円までであれば、贈与税の基礎控除となるため、贈与税はかかりません。

そのため、毎年110万円ずつ父が相談者と姉に贈与していくという方法が考えられます。

 

第3 税理士に相談した方がよい

今回のケースで、父が取得した預金を贈与せずにいた場合、いずれは父についても相続が発生し、姉と相談者が相続をすることになります。

その際は、相続税がかかることが考えられます。

(もっとも、姉と相談者の2人が相続人なので、基礎控除は4200万円ということになり、この金額を超える財産がなければ、相続税はかかりません。)

相続税がかかるかどうかは、相続財産の金額などにもよりますが、生前贈与をした場合と贈与せずに相続まで待った場合、どちらの方がより税金が安くなるか一度税理士に相談した方がよいでしょう。

(弁護士 岡本英樹)

 

 

 

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