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実例Q&A

遺産がない場合の特別受益【Q&A №338】

2014年1月9日


 

現在相続について係争中です。

おたずねしたいのは生前贈与についてです。

相続係争を母と娘の間で審議中ですが、娘には多額の亡父からの生前贈与があるのですが、裁判中に自宅不動産をやむなく双方合意の上任意売却致しました。

当該弁護士によりますと、不動産を売却し、他にめぼしい資産がない場合は、特別受益をもはや主張できない、不動産売却前ならできたとか、との判断されてしまいました。

どうやら最高裁の判例を元に判断されたようなのですが、相続裁判は売却前から進行しており、合点がいきません。

よろしくご教授のほどお願い申し上げます。

記載内容  生前贈与 遺産がない場合

(マストロヤンニ)


【まず、質問の前提の整理】

質問の内容が明らかではないのですが、今回のケースはおそらく亡くなったお父さんの相続について、その娘とそのお母さん(亡お父さんから言えば妻)との間で遺産分割を巡って争いがある中で、両者が合意で亡お父さんの遺産である自宅不動産を売却し、その売却代金を母と娘とで(おそらく2分の1ずつ)分割したという事情があったことと理解し、以下の回答をします。

【特別受益は遺産が現存する限度で役に立つ】

特別受益がある場合、その特別受益を受けた人は、現在ある遺産からもらえる分が少なくなるだけであり、既にもらった特別受益を返還するまでの必要はありません。

娘さんに多額の生前贈与があった場合、不動産の売却代金の分配の際に、お母さんの取り分を多めにするなどの合意をしておく必要がありました。

しかし、そのような手当をせず、遺産がないような状態では、特別受益を主張しても意味がありません。

【具体的な計算例】

今回は具体的計算で説明しましょう。

たとえば娘さんへの生前贈与が1500万円であったが、不動産(=現存する遺産)の売却代金は500万円程度にしかならず、ほかにめぼしい遺産もなかった場合で計算すると、遺産分割は次のようになります。

まず、みなし相続財産は売却代金500万円+贈与額(特別受益)1500万円=2000万円となりますので、お母さんとしては、みなし相続財産の2分の1である1000万円をもらえることになります。

ところが、現存する遺産は不動産のみですので、その不動産はお母さんが取得することになります。

従って、不動産の売却代金が500万円だとすると、その全額をお母さんが取得すると主張することができます。

ただ、不動産額が500万円しかないということであれば、みなし相続財産を前提にして計算した1000万円より、500万円も少なくなります。

しかし、この差額の500万円を返すよう娘さんに要求することはできません。

これは、前記のように、特別受益は現存する遺産を分ける際に、生前に受益がある人の取り分を減らした上、受益のない人の取り分を増やそうという制度であり、すでに生前贈与などで散逸し無くなってしまった遺産を取り戻す制度ではないからです。

【依頼した弁護士に説明を求める必要がある】

すでに依頼されている弁護士は、上記のような特別受益の考え方(判例・通説)を述べたものと思われます。

本件のように、不動産以外に特にめぼしい遺産がない場合には、その遺産(不動産)の売却代金を多く(場合によれば全額)もらうことで特別受益の問題を解決するべきでした。
その売却をし、いまや遺産がないような状況では特別受益を主張する意味がないということになります。

なぜ、不動産売却の際、特別受益を反映させ、半額以上の代金をもらえなかったのかを、その依頼した弁護士に質問されるといいでしょう。

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