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実例Q&A

遺産が何もない場合の特別受益による持ち戻し【Q&A №406】

2014年10月28日

 

 

兄弟三人のうちの一人に対し、親が住宅取得資金という名目で1,000万円を贈与しています。

他の二人には何もありません。

その後、やがて親が他界した場合、他界した時点、つまり相続開始時において親の財産が何もない場合には、遺産分割の対象物がないということになりますし、その場合、特別受益の持ち戻しも、遺留分の減殺請求も、何もできないということになりますか?

どちらも相続開始時に遺産が存在して初めて成り立つ制度ですか?

そうだとすれば、兄弟のうち一人だけが得をし、後の二人はもらえず仕舞いということになりますか?

記載内容  持ち戻し 生前贈与 遺産がない 遺留分減殺

(鎌ちゃん)

 

 

【特別受益制度としては、特別受益者が生前贈与分を返還する義務はない】

特別受益では、その特別受益分を遺産に持ち戻し(組み入れ)て、次の式で算定されるみなし遺産を前提に各相続人の相続分を算定していきます。

《現存する遺産》+《特別受益》=《みなし遺産》

この《みなし遺産》につき、各法定相続人に対する配分を計算します。

今回のケースでは、特別受益が1000万円であり、法定相続人が子3人ですので、そのままの状態で相続が開始した場合、各人の法的相続分は次のとおりです。

《現存する遺産》0円+《特別受益》1000万円=《みなし相続財産》1000万円

各人の具体的法定相続はみなし相続財産を3分した333万円強です。

ただ、特別受益というのは現実に生前にもらった財産を返還させるというものではなく、現存する遺産分割の際、その特別受益を受けた分はその人が既にもらったとして、後の遺産分けをしなさいという制度です。

特別受益は既に生前にもらったお金を出しなさいという制度ではありません。

そのため、今回のケースでは、特別受益を受けた人については、本来は333万円強しかもらえないはずですが、それ以上に1000万円の生前受益があるので、遺産から配分はなしというにすぎず、その人が差額の666万円強の金銭を返還させるということはありません。

【特別受益という制度では、遺産がない場合の不公平はやむを得ない】

「これでは生前に多く贈与を受けた人の一人勝ちになってしまう。不公平ではないか。」というお気持ちを持たれる方が少なくないでしょう。

しかし、親が、(生存中に)三人いる子のうち、誰にどれだけの財産を贈与するかは親自身の自由なのです。

その結果、今回のケースのように、全財産を誰か一人に贈与してしまい、他の人には遺産が残されないという不公平は、法律上やむを得ないものと考えられています。

【遺留分なら、返還をしてもらえる】

生前に多額の財産が、特定の相続人に贈与されている場合、それを取り戻す制度としては、遺留分というものがあります。

本来、遺産はその被相続人が自由に処分してよいものであり、全額を一人の子供に生前贈与しても、また、遺言書で一人の子供に与えてもなんら差支えのないはずのものです。

ただ、他の相続人のためにある程度の財産を与えるようにするというのが遺留分という制度です。

本件のように全財産1000万円が一人の相続人に贈与されていた場合であれば、他の相続人は本来の相続分の2分の1(本件では6分の1の限度)を遺留分として、返還請求ができます。

ただ、遺留分は被相続人の死亡を知って1年以内に遺留分を行使する(遺留分減殺)という意思表示をする必要がありますので、期間を経過しないようにご注意されるといいでしょう。

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