母所有の土地に、母と夫が1/2の所有の持ち家です。
母は認知症ですが、15年ほど前にこういう状態になった(認知症や兄弟間の揉め事)場合の話し合いが母と夫の間で出来ていて今、登記証は夫がその時から預かっています。そして、この土地と建物は夫が相続するということは、兄も承知しています。
老朽化で家の建替えを検討した結果、ローンのことや老後の生活も考えサブリースのマンションにすることを決めました。
不測の事態でローン返済が母に及ぶのを防ぐため、母名義の部分を夫名義に書き換えたいのですが、兄が法律違反だということで拒否されています。
契約金はすでに支払っているので解約はしたくありません。
兄は後見人ではありません。
先日、改めて母には許可をもらっていますが、兄が印鑑を隠しています。
困りました。
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【認知症はどの程度なのか】
認知症には程度があります。
現時点で、判断能力(意思能力)が全くない状態なのか、それともそうではないのかを確認する必要があります。
意思能力の有無により回答が異なります。
なお、意思能力の判断方法としては当ブログの「相続コラム:意思能力と長谷川式認知スケールに関する判例の紹介」をご参照ください。
【意思能力がある場合】
お母さんの意思能力があれば、お母さんの同意を得て、不動産の名義変更等をすればよく、また、お兄さんにはお母さんから印鑑(実印)の返還を求めることで問題は解決するでしょう。
それでも、お兄さんが渡さないというのであれば、実印を紛失したとして、新たに印鑑登録の手続きをするといいでしょう。
【意思能力がない場合】
お母さんに意思能力がない場合には、お母さんの所有する建物持分や土地所有権をあなたのご主人に移転することはできません。
お母さんの所有しているこの土地及び建物持分については、あなたのご主人が相続することになっており、それをお兄さんも承諾しているということであっても、現時点では、
お母さんは生きておられ、相続は開始していませんので、お母さんが権利者です。
そのため、権利移転はお母さんの意思を無視してはできませんし、お母さんの意思能力がない場合には権利移転は不可能です。
お兄さんの法律違反というのは、このような点を指摘しているのでしょう。
【成年後見人の選任しかないが・・】
家庭裁判所にお母さんに成年後見人をつけるように申立てをすることも考えられます。
しかし、後見人はお母さんの現在の財産を維持保全するのが目的です。
新たなサブリースマンションを建築するために、お母さんの権利をあなたのご主人に移転するというのであれば、後見人としては監督する家庭裁判所にお伺いを立てること
になりますが、そのようなお母さんの財産が減少するような行為を裁判所が認めるとは思われません。
結局、お母さんの意思能力がない場合には、権利移転をすることは難しいというのが結論になります。