【質問の要旨】
認知症の義母からの贈与は受け取っても問題ない?
【ご質問内容】
金庫の中には散々娘や孫にあげた後のおもちゃのようなのが数点、寺の権利書(?)と80万くらいあると言い、私にあげると言ってききません。
何時忘れるかわからない状況ですので、私は貰いたくありません。
後で無い!盗られた!と言い出す可能性もありますし、絶対揉めないと義母は言いますが、娘さんが義母没後何も言わないとはかぎりませんし。
言ってることが毎日変るし、以前1点だけ親戚中居る中で貰いましたが、私は預かってるつもりです。
その事は言いません(忘れてるか?)
なので預かるつもりで一旦受け入れておいた方がいいのかなとも思いますが正直面倒くさいです 法律的にどうなりますか?
【義母に意思能力がなかったとして、贈与が無効になる可能性がある】
まず、義母の亡くなる前に発生が予想される問題について述べます。
他人にものを預ける、あるいは贈与する場合、贈与する人に判断能力(法的には「意思能力」と言います)がない場合、その行為は効力がありません。
義母は認知症だということですが、その程度によっては意思能力がなかったということで、金庫の中身を預ける行為も、あるいは贈与する行為も、無効になりかねません。
この場合、義母からあなたが金庫の中身を受け取ったとしても、後に義母の後見人やその相続人から贈与行為等は無効だとして返還を求められる可能性があります。
その際、金庫にはもっと多くの財産があり、それをもらったのだろうと主張される可能性も考えておく必要があります。
そのため、可能な限り、そのようなものを受け取ることは避けられるのが賢明でしょう。
もし、どうしても受け取らざるを得ないのなら、第三者に立ち会ってもらって、何をもらったのか(可能であれば他にはもらっていないことも)また、贈与なのか預かるだけなのかを書面化しておくといいでしょう。
もし、預かるというのであれば、何の目的でいつまで預かり、いつ返還するのかという点を書面で明確にし、返還期限に返還を実行することが必要です。
【義母の死後は不当利得返還請求と特別受益が問題になる】
次に、義母の死亡後の相続の観点から考えてみます。
1)判断能力欠如による返還請求の可能性
まず、義母の死亡後には、その相続人となった子が、義母には意思能力がなかったから、贈与等は無効だ、返還せよと主張してくる可能性があります。
2)配偶者の特別受益の可能性
次に、あなたの配偶者もまた相続人になります。
相続人が生前に贈与を受けた分は、特別受益として遺産分割の際に遺産に持ち戻しする必要があります。
相続人以外の者が贈与を受けてもそれは特別受益にならないのが原則なのですが、他の相続人としては、(それが法律的に認められにくいとしても)あなたが贈与を受けたということは、《あなたと一体の立場》にあるあなたの配偶者がもらったものだとして、配偶者の特別受益を主張してくる可能性がなくはありません。
この点については、すでに述べたように、本来、特別受益は相続人本人に対してされた贈与のことを言いますので、相続人の配偶者であるあなたが贈与を受けたものは、原則として特別受益にはならないと反論するといいでしょう。