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実例Q&A

相続放棄後の分譲マンションの管理費【№620】

2018年10月2日

 

 

【質問の要旨】

相続放棄したマンションの管理費も支払義務があるか

【ご質問内容】

夫が死亡し、親族全員相続放棄しました。

マンションの管理会社が弁護士を通じて 夫の死後から現在までの マンション管理 費、修繕費(150万ほど)を支払って欲しいと連絡がありました。

応じない場合は 訴訟を起こすとのことです。

この場合、私たちは支払わなければいけないのでしょうか?

相続財産管理人は私たちが申立てするのでしょうか?

 

(きらり)

 

 

 

※敬称略とさせていただきます

【相続放棄をしても、必ずしもすべての責任を逃れるわけではない】

相続放棄をすると、放棄した人は、はじめから相続しなかったということになります。

そのため、相続放棄をすれば財産はもらえないが、借金などの支払も不要になります。

ただ、相続に関する法律には次のような条文があります。

《相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。》(後略)・・《民法940条》

この条文は、次の相続人が決まって管理を始めるまでの間は、相続放棄をした人が財産の管理責任を負うという意味です。

今回の質問で言えば、被相続人である夫の相続に関して、親族全員が相続放棄したということですので、夫の相続人がいない状態であり、前記の条文の適用を受け、相続放棄したあなた方は、管理を継続しなければならないことになります。

そのため、管理する立場として、相続放棄したあなた方は管理費を支払いする義務があるということになります。

【管理責任を免れるには管理人選任が必要】

今回のような相続放棄で相続人がいなくなったという場合、相続放棄者が管理責任を免れるためには、家庭裁判所に相続財産を管理してもらう人(相続財産管理人)の選任をしてもらう必要があります。

その財産管理人が選任されて以降は、その管理人が遺産の管理責任を負い、放棄した相続人は管理費用を免れることになります。

(参考までに言えば、相続財産管理人とは、相続人があることが明らかでない場合や、相続人が不在の場合に、相続財産の管理を行う者のことをいい、利害関係者であれば選任の申し立てをすることができます。ただ、選任の申し立てをするには、大阪であれば、予納金として90万円前後を納付する必要があります。)

【現実には支払いが不要になる可能性も高い】

ところで、観点をかえて、管理組合の立場から見て、滞納管理費の回収のためにどんな手段があるのかを考えてみましょう。

管理組合としては、管理費が滞納されている場合、その建物を新しく譲り受けた新所有者に対して滞納管理費の請求ができます(区分建物所有法第7条、第8条参照。条文は末尾に掲載しています。なお、新所有者は条文中の特定承継人に該当します)。

被相続人のマンションは区分所有建物ですので、この法律が適用されます。

本件のように、マンションを所有しているにもかかわらず相続人全員が相続放棄をするようなケースは被相続人に多額の借金(債務)があると思われます。

債権者としては、債権を回収するために、抵当権を付けていればそれを実行したり、あるいは判決を得て強制執行で、マンションを競売することになります。

競売でマンションを買った人は、前記法律があるため滞納管理費の支払債務を引き継ぎますので、管理組合としては、新所有者に延滞債務を請求することができます。

マンションを競落するのは不動産業者である場合が多く、滞納管理費を支払う必要があることは百も承知ですので、すんなりと延滞債務を支払います。

【あなたとしては、管理組合に対し、競落人である新所有者に請求することを求めるといいでしょう】

最初に述べたように、法律的には、相続放棄をした場合でも管理責任があるため、あなたには延滞管理費の支払責任があると言わざるを得ません。

しかし、現実問題として、管理組合としては、抵当権が実行された場合、競落人になった新所有者に請求をすることができ、回収ができます。

そのため、管理組合に対し、競落した新所有者に請求することを求め、それまでは支払いをしないという対処をされるといいでしょう。

《参照条文》
区分建物所有法第7条  
1. 区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
(2項以下省略)
第8条  
前条第1項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。

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