父は兄弟以外に身寄りのない叔父の介護をしていましたが、叔父は先月亡くなりました。
遺言はありませんので兄弟間で遺産相続を行います。
生前父は叔父から土地を評価額で購入し(譲渡ではない)、父はその土地に同居(介護のため)する為の家を建てた。
(父は別に自宅はあり、介護をしないのであれば建てる必要はない)
その時、叔父は税引き後の売買の残金(700万円)を建築費用として父に渡し、父は自分の預金(800万円)を併せて自宅を建てた。
しかし、一切叔父の面倒を見ていない兄弟は、法に基づき叔父の財産(2000万円)+売買の残金(700万円)を差し戻した額を均等に分割すると主張しています。
この場合、以下①~③についてはどうすべきかご回答頂けます様、宜しくお願い致します。
①売買の残金(700万円)の差し戻しは必要か?
②叔父の面倒を看ていた分の考慮なしに、兄弟で均等に分割するべきか?
③介護や自宅の建築費(自費800万円)を考慮できる場合、主張できる金額は?
今回は、相続人間の「寄与分」及び「特別受益」に関する質問です。
【700万円が特別受益にあたるかどうかが争点になります】
700万円を差し戻せという他の兄弟の主張は、700万円が特別受益に当たるという主張です。
これに対して父は、700万円は特別受益ではない。
つまり、叔父のために使った金であり、自分は利益を受けていないと反論することになるでしょう。
具体的に言えば、叔父のために特別に家を建てる必要があったことや、バリアフリーとか、トイレを特別仕様にしたとかの理由があれば、そのために必要経費として叔父からもらったものだということもできるでしょう。
ただ、この点をはっきりと説明できないのであれば、700万円は特別受益ということで遺産に組み入れられる可能性があります。
【介護した点は寄与分として主張できます】
本件のような場合の寄与分は、父が介護しなければ、専門業者に支払ったであろう金額を計算することになります。
言い換えれば、どれだけヘルパーや老人ホーム等の介護費用や物品費が軽減されたのかを考慮して金額が定められます。
その際、叔父の介護を要する程度、具体的な介護の内容、介護期間等が参考にされます。
【800万円も寄与分として主張できます】
父が叔父の自宅を建築するにあたって自ら800万円を支出した場合は、800万円が寄与分に当たり、具体的相続分の計算の際に考慮されることになります。
【明確な基準はありません】
寄与分も特別受益も、どういう項目がどの程度認められるのか、どうやって計算するのかというはっきりとした基準が存在しません。
そのため、これらの争いについては、双方の言い分が真っ向から対立し、紛争が長期化し、兄弟間が険悪になることも多いです。
父の立場からは、叔父の介護に要した手間と費用を粘り強く説明しながら、場合によれば金額的な妥協もして解決するのが望ましいでしょう。