亡父の公正証書遺言があります。
私は在日で10年以上前に帰化しています。
帰化手続き後、父にそのことは報告済みですが、どうしたことか遺言書には私の結婚後の姓と帰化前の名前が私の姓名として書かれて帰化後の戸籍上の名前とは異なっています。
この公正証書遺言は有効でしょうか。
遺言作成時の判断能力にも疑義を持っています。
相続税の申告書には遺言書に記載の名前を書くのでしょうか。
その場合遺言書を認めたことになるでしょうか。
【正式な戸籍上の氏名と遺言書の記載が異なる場合】
受遺者(遺産をもらう人)の氏名が正式な戸籍上の氏名と違っていても、遺言書全体から見て受遺者が誰かを特定できるような場合、遺言書の受遺者についての記載部分は有効です。
例えば、氏名の記載が違っていても、生年月日や続柄(「長女」など遺言者との関係)も考慮した場合、その遺言書に記載された氏名の人を特定できる場合には、遺言書のその記載部分は有効です。
相談のケースでは《私の結婚後の姓と帰化前の名前が私の姓名として書かれ、帰化後の戸籍上の名前とは異なっています》ということですが、この程度ならその人物があなたであると特定できることになるでしょう。
(もっとも、公正証書遺言では専門家である公証人が関与し、住民票などを確認しますので、誤記だとは考えにくいのですが)。
【遺言作成時の判断能力に疑問がある場合は・・】
遺言作成時に遺言者に判断能力がなければ、遺言書は無効です。
遺言者の判断能力に疑問を感じておられるのであれば、父がかかっておられた病院のカルテや看護記録を取り寄せることをお勧めします。
相続人であれば取り寄せができますが、カルテの判読や判断能力があるか否かの判断、その後の交渉等を考えれば、早い段階で弁護士に頼むことも考えていいでしょう。
【相続税申告書の記名押印と遺産分割の同意】
相続税の申告書には現在の氏名を記載します。
相続税の申告書には相続人の記名及び押印欄がありますが、これは税務署に対する相続税の申告をしたということであるにすぎず、それだけでは、直ちに申告書の分割内容の遺産分割を承認したことにはなりません。
ただ、誤解を招くことを避けるため、相続税申告の前(それができないやむを得ない理由がある場合には申告後、ただち)に、他の相続人等に対して、税務申告内容で分割を了承したものではないという意思表示をしておくことをお勧めします。