【質問の要旨】
相続不動産の賃貸収入の現金は相続遺産の範囲になるのか。
どうやって公平に賃料収入のお金を分割して行けばよいのか
【ご質問内容】
2年前の被相続人の死後、生前から継続している相続不動産の賃貸収入の現金が1000万円を超えるものとなっています。
現状未だに遺産分割が全くされ無い状況下で、相続人の一人がこれを勝手に回収し続けています。
遺産果実としての、この現金は相続遺産の範囲ではないとすれば、家庭裁判所の分割調停では扱ってもらえないお金なのですか。
どのような手段で公平に早くこのお金を分割して行けばよいのでしょうか。
相続人間の話し合いでは無理なようです。
【生前の賃料について】
被相続人の所有不動産から生じる賃料収入については、生前の分と死後の分を分けて考える必要があります。
まず、生前の賃料は、当然、被相続人が輸入として得ていたものですので、被相続人の死亡時には、現金または預金という形で残っているはずです。
そのため、生前に賃料については、全体としての遺産分割の中の現金または預金の分割の問題となります。
死亡時点で現金又は預金として残っていないのであれば、誰かが取り込んだのか、贈与してもらったかです。
相続人の一人が取り込んだということであれば、被相続人は取り込んだ人に対して、取り込んだ金銭の返還請求権(不当利得返還請求権)をもっていたことになり、相続人がその相続分に応じてこの権利を取得することになります。
【死後の賃料について】
死後の賃料をだれが取得するかについては平成17年にでた最高裁判所の判決があります。
その内容は《遺産に賃貸物件がある場合、その賃貸物件につき遺産分割が終了するまで賃料については、各相続人がその相続分に応じて取得する》というものです(参照:【相続判例散策】遺産分割前の遺産不動産の賃料収入は、遺産分割によらず、当然に法定相続分に応じて取得される)。
なお、遺産分割が終了した後は、その不動産の取得者が賃料をもらうことになりますが、それまでの分は各相続人が法定相続分に応じてもらうことに変わりはありません。
【相続人の一人が取得した賃料の回収方法】
実際には、遺産分割調停の中で、賃料もまとめて話し合うことも多いですし、最終的に遺産分割までの賃料分の問題も併せて一挙に解決することが多いです。
そのため、遺産分割調停の申立する際に、参考事項として、賃貸物件からの賃料が相続人に一人に単独取得されていることを記載しておくといいでしょう。
【賃料の早期支払いのための方法】
ただ、遺産分割調停が長引くというのであれば、調停中に調停委員から《少なくとも死後の賃料だけでも先に支払うように》という説得してもらうことも考えていいでしょう。
また、遺産とは別ですので、遺産分割調停の間にも、別途、賃料請求訴訟を起こすことも可能です。