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実例Q&A

亡き母に代わって父の遺留分を請求できないか【Q&A №183】

2012年8月8日

 

 

【質問の要旨】

父死亡後に母も死亡。

父の遺産に関する遺留分を、母に代わって請求できる?

【ご質問内容】

遺留分減殺請求前に亡くなった場合

家族は父、母、姉、私の4人です。父が亡くなり、私は姉に遺留分減殺請求をする予定です。

母は、父が亡くなってから3ヶ月後に亡くなりましたが、遺言書はありませんでした。

父が亡くなった時点で母は要介護度5で配偶者として娘に遺留分減殺請求を行うことはできませんでした。

このような場合、母の遺留分減殺請求分はどうなるのでしょうか。母の遺留分減殺請求分の一部を私が姉に対して主張することはできないのでしょうか。

回答よろしくお願い致します。

(プラン)

 

【遺留分減殺請求権も相続される】

亡くなったお父さんの遺言書に《財産は全部、姉に相続させる》旨の記載がある場合、他の相続人の遺留分が侵害されます。

今回のケースではあなたの遺留分も侵害されますが、お母さんの遺留分も侵害されることになります。

そのため、お母さんがお姉さんに対し遺留分減殺請求をすることが可能です。 

ただ、今回のケースではお母さんが遺留分減殺請求前に亡くなったので、このお母さんが有していた遺留分請求権が相続されるのかどうかが問題になります。 

この点については、民法で承継されることを前提とした条文(末尾の条文参照)がありますので、遺留分減殺請求権は相続の対象になります。 

その結果、あなたは、お母さんの遺留分請求権のうち、2分の1の権利を相続で取得することになります。

【減殺請求はできるだけ早くする】 

今回の質問では、母が要介護5で請求ができなかったということですが、要介護の理由が高度の認知症で意思能力のないというのであれば《遺留分が侵害されたということを知る》ことができる状態ではなく、遺留分行使の起算時期が開始したとはいえないでしょう。

そのため、新たにあなたが、《母の遺留分が侵害されたことを知った》時点から1年間以内に、母の分の減殺請求をするということになります。

参考までに言えば、通常の場合、お父さんの書いた《財産は全部、姉に相続させる》という内容の遺言書を見たときが、《母の遺留分が侵害されたことを知った》ときに該当することになるでしょう。

遺留分については減殺請求期間が限られていますので、あなた自身の分のみならず、お母さんの減殺請求であなたが相続した分についても、できるだけ早く減殺請求した方がいいでしょう。

【数次相続という複雑な問題なので、弁護士に相談する】

遺留分減殺請求自体はそれほど難しいことではありません。

ただ、遺留分減殺請求については、いろいろと難しい問題もありますし、本件ではお父さんとお母さんの相続が相次いで生じている(数次相続と呼びます)複雑な案件ですので、念のため、法律の専門家である弁護士に相談され、どの程度侵害されている(請求できる)のか、又、減殺請求の書面の書き方などを相談されるといいでしょう。

《参考条文》

現在(相続法改正後)の民法1046条には、

「遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受遺者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる

とあり、この「承継人」との記載から、遺留分減殺請求権の相続が認められていると判断できます。

なお、相続法改正前の民法第1031条にも、

「遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するに必要な限度で、遺贈及び前条に掲げる贈与の減殺を請求することができる

という、同趣旨の条文が存在しましたので、相続発生の時点がいつであっても、遺留分減殺請求権が相続により承継されるとの結論は同じです。

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