父が平成5年に亡くなりました。
法定相続人は母・私・弟です。
弟は父が亡くなる前から借金を繰り返し、その都度両親が返していた状態です。
父が亡くなってからも700万もの借金が出てきて母が父の保険金で返済しました。
このままでは、唯一の財産である住んでいる家がなくなると思い、弟には言わず私の名義に変えました。
その後も悪いことをしては刑務所に入り出てきて1年もしない内に女の人をだまして4年前にも800万もの借金を作ったり、窃盗を繰り返したり今も窃盗で刑務所に入っています。
別の女の人にも500万の借金をしている状態です。
弟は女の人に自分にも相続の権利があるから、刑務所から出てきたらそれを主張すると言っています。
母も認知症が入ってきていて施設に入れながら面倒を私がみていかなくてはいけないのですが、弟にも相続させなくてはいけないのでしょうか
【迷惑をかけても相続権はなくなりません】
弟はだいぶ父にお金の面でお世話になっていたようですが、だからといって父の相続人であることが否定されることはありません。
そのため、自宅などの父の遺産をどうするかは、やはり弟も交えて相続人全員で協議する必要があります。
【特別受益の可能性があります】
ただし、弟は、父が生前に弟の借金を支払っていたということであれば、弟には相続分の前渡し(特別受益といいます)があり、この分を遺産分割で考慮することも可能です。
この特別受益が多いのであれば、今回の遺産分割において弟の取り分は実質的には存在しないとされる可能性があります。
具体的には、弟が父から支払ってもらった借金額も遺産に入れて、遺産の総額を算出し、これを弟の法定相続分(4分の1)を乗じた額が、弟が父から借金を支払ってもらった額より少なければ、弟は今回の遺産からは何ももらえないということになります。
【推定相続人の廃除ができる可能性があります】
民法には推定相続人の廃除という制度があります。
これは推定相続人に著しい非行がある場合などに家庭裁判所の審判によってその者を相続人から排除するという制度です。
弟の非行が著しい場合には、母の相続において弟を相続人から排除することができる可能性があります。
【母の保険金の支払い】
但し、母が、父の保険金で支払った借金返済については注意が必要です。
死亡保険金は遺産ではありませんので、受取人である母の固有財産になります。
この支払い分は、父の遺産分割の関係での特別受益になりません(但し、将来、母の遺産分割では特別受益になります)。
この点はよく誤解されやすいところですのでご注意ください。
【同意なしに、登記名義の移転はできないはずですが・・】
住んでいる家を、弟に言わずに、あなたの名義にしたと質問に記載されています。
しかし、父の死後においては、弟の同意なしでこのような登記はできないはずです。
あなたの単独名義にするには、相続人である弟の同意が必要であり、書類としては弟の実印の押捺や印鑑証明書が必要です。
もし、弟の同意なしに登記をしたというのであれば、その登記は無効です。
既に登記を済ましているのなら、弟からその登記について同意をとる(追認してもらう)必要があるでしょう。
特別受益の関係で、弟に遺産の取り分がないとしても、やはりその点は遺産分割協議や調停などの手続きで明らかにした上で、弟の同意を早急にとる必要があるでしょう。
又、母の認知症の程度にもよりますが、程度がひどければ、成年後見人の選任や特別代理人の問題も発生します。
事案が複雑ですので、できれば法律の専門家である弁護士に早期に相談されることをお勧めします。