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実例Q&A

借地上にあった父の家の使用料【Q&A №285】

2013年6月19日


 
30年前に父が亡くなりましたが、兄妹の間で遺産(家、借地権)分割の手続きをせずに放置してきました。
約10年前に地主の希望で家を壊し、その場所にマンションを建て、借地権と交換に1フロアを与えられました。 
そのマンションはどういう理由か兄の名義になっていて、兄夫婦は10年間住み続けています。
私は別居で何の利益も得ていません。
近々、遺産分割の協議を予定していますが、仮にそのマンションを兄妹で50%ずつ共有名義に変更できた場合、過去にさかのぼって、兄夫婦から、過去10年間住み続けた費用に相当する金額をもらう権利があるでしょうか。
よろしくお願い申し上げます。

記載内容  借地 使用貸借

(nob)



【自分の家に住んでいるので、賃料相当分の請求はむずかしい】

お兄さんの住んでいるマンションの1フロアは、遺産そのものではありません。
お兄さんが、家主からマンションの1フロアをもらって、自分の単独所有名義にしているのですから、お兄さんとしては自分の家に居住していることになり、そこに居住することでは、なんらあなたの権利を侵害しているわけではありません。
従って、お兄さんがマンションの1フロアをもらった後の過去10年間の賃料に相当する分をお兄さんに請求することはむずかしいでしょう。

【借地権を消滅させられたことの損害請求は可能】
問題は、お兄さんがマンションの1フロアをもらうときに、あなたの借地権を消滅させたことです。
お父さんが死亡した時点では借地権とその上の家はあったのですから、あなたも法定相続分に応じて、その借地権及びその上の家を相続しています。
それなのに、お兄さんは、地主の希望で家を壊して借地権を消滅させました。
この借地権等を消滅させることについては、共同相続人であるあなたの了解が必要です。
あなたの意向を聞き、借地権についてのあなたの相続分を尊重するべきでした。
それをせずに、借地権を消滅させ、マンションの1フロアをもらったという点で、お兄さんの行動はあなたの権利(相続分に応じた借地権及び家の持分)を侵害しており、権利侵害行為ということができます。
あなたとしては、お兄さんに対して、あなたが相続した限度での借地権等を侵害されたとして、その損害(金銭請求)を主張することができます。

【金銭賠償が原則だが、交渉であるので・・】
マンションの1フロアの半分をもらうことをお考えのようです。
あなたの相続した借地権等を消滅させられたことによる損害は、本来は金銭で賠償されるべきものです。
ただ交渉ごとですので、あなたとしては、その金銭賠償の価額がマンションのワンフロアの2分の1に相当すると理解して、1フロアの2分の1の所有権移転を請求することも可能ですし、もちろん、損害賠償請求として金銭で請求することも可能です。
相手方の出方に応じて、どちらかの方法を選択するといいでしょう。

あとはお兄さんとの人間関係にもよるでしょうが、前記のような話をお兄さんと交渉しつつ、本来ならお父さんの家(とそれに代わるマンション)の利用権について交渉されるのがよいでしょう。
また、ご質問からは明らかではありませんが、マンションのフロアを地主さんからもらうまで、お父さんの建物は誰が住んでいたのでしょうか?
もし、お父さんの生前からお兄さんが住んでいて、その流れのままお兄さんが住み続けていたということであれば、お父さんとお兄さんの間には、無料で住み続けることができることの合意(=使用貸借契約と言います)が成立していた可能性があります。
このような使用貸借契約が成立していた場合には、お父さんが亡くなった後も、遺産分割協議が成立するまではお兄さんが引き続き無償で使用することができるというのが裁判所の扱いです。
あとは、お兄さんのほうから、「使用利益を請求するなら固定資産税も半分負担するように」との反論が返ってくるでしょうが、使用利益に比べればそれほど高いものではないでしょう。

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