母の再婚相手が亡くなり、その相手の子供と母とで、遺産分割協議の最中です。
夫婦で暮らしていたマンションがあり、2分の1ずつの共有名義になっていますが、実際には母は出資していません。
この場合、このマンションは「財産の持ち戻し」になってしまうのでしょうか。
さかのぼって、贈与税(相続税)を支払うことで、半分の名義が改めて得られる(認められる)のでしょうか。
母が資金を出さずに、どのような経緯で登記簿上2分の1ずつの共有名義になっていたのか不明ですが、現実として登記簿上そのようになっている権利というのは、どれぐらいの効力があるものなのでしょうか。相手方の子供側からは、確かに2分の1の資金を支払ったという証拠の提示を求められています。
遺産分割協議には直接関係がないこと、と主張することは出来るでしょうか。
【登記名義があるという意味について】
《現実として登記簿上そのようになっている権利というのは、どれぐらいの効力があるものなのでしょうか》という質問については、一応、お母さんがその持分をもっている(所有権がある)らしいという推定が働くという程度の力しかありません、という回答になります。
相手方が、お母さんが資金を出していないということを明らかにすれば、登記名義があってもお母さんの持分は認められないということになります。
【登記がなぜ共有になったのか】
お金を出していないのに、マンションの2分の1がお母さん名義になっている理由としては、
① 再婚相手がお母さんに贈与した。
② 再婚相手がお母さんの名義を借りていた(実質は全部が再婚相手の所有である)。
という2つが考えられます。
本来はこの①か②かのどちらかを判断して、遺産分割に応じるべきものです。
遺産分割では、お母さんの持分が本当にお母さんのものか、それとも実質上は再婚相手のものであるかは、その財産が遺産に入るのかどうかという点で大事ですので、《遺産分割協議には関係ないことだ》ということはできないでしょう。
ただ、現時点では再婚相手が死亡しているので、上記①②のどちらの趣旨であったかを明らかにすることは困難のように思います。
【どちらが有利かという観点から考える】
観点を変えて、どちらの方が有利かという視点から考えてみましょう。
上記①の贈与とした方が有利そうに見えますが、そうではありません。
贈与とした場合、まず、贈与税の支払いをする必要があるのでは、という問題があります(過去の贈与について、税の支払いが必要かという点は税理士さんにお聞きください)。
また、贈与であっても、お母さんが贈与を受けた2分の1の持分が遺産分けと全く関係のないものとされるわけではありません。
贈与の場合、特別受益として、遺産計算では遺産に持ち戻されて、遺産分割で考慮されます。
結局、贈与税を支払っても、お母さんの持分が遺産の中に入るので、わざわざ贈与とするメリットはないと考えるべきでしょう。