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実例Q&A

後妻が遺産を開示しない【Q&A №328】

2013年11月15日


 

10月末に父が亡くなり、相続人は息子である私と、父の後妻の二人です。

後妻は財産がもうあまり残っていないと言って開示せず、預金を取り込んでいる可能性があります。話合いも無いので調停にもちこむ予定です。

後妻の預貯金は、名義預金として相続財産に含まれますでしょうか?

もしそうでしたら、調停あるいは審判で裁判所が後妻の預貯金を調査してもらえるのでしょうか。

あるいは税務署に連絡して、相続税の申告をしたら良いのでしょうか。この点が良く分からず困っております。

何卒よろしくお願い致します。

記載内容  被相続人以外の預金の調査 裁判所の調査嘱託 後妻 不当利得 特別受益

(bineko)

 

【後妻名義の預金は、原則として遺産には含まれない】

遺産に含まれるのは、原則として被相続人であるあなたのお父さん名義の預金です。

そのため、後妻さん名義の預金はお父さんの遺産にはあたらないとされます。

ただ、その後妻さん名義の預金が、お父さんの口座からの振込による入金である、あるいはお父さんの口座から現金で引き出した分を預金したものである、ということも考えられます。

このような場合、お父さんが自分の意思で後妻さんに贈与するという趣旨であったとすると、それは特別受益の問題になります。

又、後妻さんがお父さんの知らないところで勝手に預金を引き出したというのであれば、それは不当利得となり、お父さんは後妻さんに対して、引き出した金額の返還請求権を持つということになり、その請求権が遺産になります。

(この場合は、お父さんが後妻さんに対して有する不当利得返還請求権を、相続人が法定相続分の割合で取得するので、その返還請求権に基づき後妻さんに請求するということになります。)

なお、お父さんが病気や認知症で意思表示ができない時期に、預金が送金されたり、あるいは払戻しされたりしていれば、お父さんの意思に基づかない預金の取得であり、上記の不当利得返還請求をすることになります。

【裁判所は調査をしない】

被相続人の預金口座の動きは、相続人であれば照会が可能です。

しかし、後妻さんの口座の照会には、本人である後妻さんの同意が必要です。

通常、後妻さんがそのような同意をすることは少なく、金融機関が照会に応じることはないでしょう。

裁判所はあくまで、各当事者が持ち込んだ証拠に基づいて調停をまとめたり判決を下したりするにとどまり、裁判所が後妻さんの取り引き履歴などの資料を自ら調査するということはありません。

あくまで、各当事者がそれぞれ調べてきた資料を提出して、それを前提にどれだけ遺産があるのか、その遺産の取り分をどうするのか、といった解決をするのが裁判所であるとご理解ください。

ただ、訴訟を起こした後に、その手続きの中で、裁判所に対して後妻さんの口座の取り引きのある金融機関に、後妻さん名義の口座の有無及び内容の照会を求める申立(調査嘱託の申立といいます)をすることはできます。

裁判所が、後妻さんの口座を調べる必要があると判断した場合には、裁判所がその金融機関に回答するように書類を送付してくれ、その結果、後妻さんの口座の動きが判明する場合があります。

【相続税の申告と後妻の財産調査の関係】

相続税の申告をしたからといって、税務署が後妻さんの財産を調べてくれるわけではありません。

税務署に、後妻さんが遺産を取り込んでいると申し立てをすることも可能ですが、その額が多額であれば税務署も積極的に動くでしょうが、少額であると税務署は動かない場合も多いです。

当事務所でも税務署に《遺産がもっとある、相手方が隠している》という申し入れをしたことがありますが、結局、そのケースでは大した財産が出てきませんでした。

また、遺産額が増加すれば、その内容を税務署から聞くことは可能(正確にいえば相続税の修正申告に漏れていた財産が記載される)ですが、税務署がした相手方の口座の調査結果までは教えてもらえませんでした。

【自力でどこまでの調査ができるかがポイント】 

遺産調査は自力でどれだけの情報を集められるかがポイントになります。

どのような手段を尽くして遺産を調査するのか、調査により得た情報からどのような仮説を立て、相手方にどう迫っていくのかが重要になります。

この点は慣れないとなかなか難しいところですので、紛争を調停や訴訟に持ち込まれる前に、調停・訴訟での方針も含めて一度お近くの弁護士など専門家に相談されるとよいでしょう。

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