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実例Q&A

父から名義変更を受けた保険契約【Q&A №350】

2014年3月4日

 

 

【質問の要旨】

・父の保険名義が妹になっていた

・無職の妹には子供が2名いて、学費も父が出している

・妹に変更された保険金や生活費を父の遺産とみなせるか?

【ご質問内容】

長男の私は少し離れたところで自分の家族ですんでおり、父は妹と同居しています。

30年ほど前、妹が子供を2人生み離婚して実家の借家に住んでいたところいつの間にか実家で同居(子供男2人と)するようになっていました。

父の年齢が80半ばになり、実家の内情を確認したら、父が簡易保険をかけており、
契約者が父で被契約者妹、受取人が父、
契約者が妹で、被契約者孫、受取人が妹、
などバラバラで契約し全部父が払っていました。

昨年の初め、300万円の簡易保険が満期になったときに、バラバラの簡易保険を満期分支払い、約1000万円分契約者と受取人が妹名義に変えてしまっていました。

約1000万円は妹名義で証書は妹が持っていました。

父は今も同居しているのでうやむやでしたが、最近は妹にやったと言い出し始めました。

妹は10年以上無職で子供の大学までの学費を親に出してもらっていることも確認済みです。

数年後の生活費や約2000万円の簡易保険分は、遺産相続に含むことはできませんでしょうか? また、今準備すべきことはどのようなことでしょうか?

(マッキー)

 

【生命保険金を遺産に持ち戻すのは例外的】

お父さんが生命保険(死亡保険金)契約をし、その受取人を指定している場合には、その受取人の受ける生命保険金は、原則として遺産には入らないというのが裁判所の扱いです(Q&A №298参照)。

もっとも、保険金額と遺産総額とを対比して相続人間で著しく不公平となるような場合には、介護の程度などの事情にも鑑みて例外的に遺産への持ち戻しを認める判例もあります(Q&A №298参照)。

今回は遺産総額がわからないため回答できませんが、遺産総額との比較はぜひ検討されるべきでしょう。

【他人の保険料を支払っていた場合も特別受益になりうる】

但し、お父さんではなく、それ以外の人の名義で生命保険契約をし、その保険金をお父さんが支払っている場合には、お父さんが支払っている保険料が特別受益になる可能性があります。

【契約名義の変更も特別受益にあたりうる】

お父さんの名義の生命保険契約があり、お父さんが保険料を支払っていた場合、その解約返戻金はお父さんの財産です。

そのような保険につき、契約名義が妹さんに変更された場合、その名義変更の時点で存在していた解約返戻金額がお父さんから妹さんに行くわけですから、その分が特別受益になるものと思われます。

又、その後の保険料をお父さんが支払っていたというのであれば、その保険料支払い額が特別受益になる可能性があります。

【孫への学費と特別受益だが・・・】

今回の質問では、お孫さんの学費をお父さん(おじいさん)が支払っています。

まず、特別受益は法定相続人に対する贈与であることが必要です。

ところがお孫さんは法定相続人ではないので、贈与を受けても特別受益にあたらないのが原則です。

ただし、お孫さんへの贈与が実質的に妹さんに対する贈与であるといえる特別の事情がある場合、例外的に特別受益とされる可能性があります。

これには、贈与の手配を妹さんがすべて行い、妹の口座を経由して孫に贈与されているなど、いくつかの事情がそろっている必要がありますので、ここは専門家に相談された方がよいでしょう(参照:リンク:【相続判例散策】相続人以外の者に対する特別受益)。

【生活費と特別受益について】

生活費についても(生活水準により様々ですが)一般には月額10万円程度であればお父さんの扶養義務の範囲内であるとして、特別受益と認めない場合が多いでしょう。

【生命保険の経過を確認、記録する】

以上のとおりであり、あなたの方としては生命保険を中心にして、遺産分割の話を進めるのがベストだと思います。

そのため、現在するべき準備としては、簡易保険の贈与経過(保険料を支払った人物、関与した人物や日付、各種手続書類の確認等)をお父さんや妹さんから聞きだして確認し、記録に残しておくといいでしょう。

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