税務署は被相続人の口座を教えてくれないのでしょうか。
【ご質問内容】
相続が始まると、税務署は被相続人のみならず家族名義の銀行から証券会社の口座をすべて把握するというような話を耳にしたのですが、だとするならば、せめて被相続人の口座ぐらいは相続人に知らせてくれないものでしょうか?
【Q&A №98】預金の取引履歴を調べる方法を読みますと、「どこの金融機関だけでなく、支店名も調査しましょう。」とあり、口座を見つけるのも苦労する様子が伝わります。
果たして税務署は本当に全ての口座を把握しているのでしょうか?それとも知っていても教えてくれないのでしょうか?
今回は税理士業務の問題ですが・・
今回の相談は税務調査の話です。
そのため、詳しいことが知りたいのであれば、税理士にお尋ねいただく必要があります。
ただ、弁護士の理解している限度で以下の回答をします。
【税務署は調査結果を教えてくれないが、修正申告でわかる場合がある】
相続税の未納付がないか、あるいは申告された相続税の内容に誤りがないかどうか、税務署が調査することがあります。
その際、税務署は被相続人のみならず、必要に応じて家族名義の金融機関口座や証券会社などの取引内容を調査することがあります。
ただ、税務署はあくまで徴税の都合で調査するのであり、その内容は他の相続人に教えてくれません。
【過去の経験からいえば・・】
私(大澤)は過去に一度、税務署に《節税された可能性がある》との情報提供をしたことがあります。
遺産総額が億を超す事件であり、相手方が被相続人の預金を取り込んだケースでした。
そのとき、税務署は調べた結果を教えてくれませんでした。
ただ、隠された財産がある場合には、通常の場合は修正申告が必要となります。
その際、共同相続(要するに相続人が複数)であれば、隠した人以外の相続人も相続税を支払う必要があり、そのために修正申告書に捺印をする必要があります。
その修正申告書に、新しく記載された財産があれば、それが税務調査で新たに判明した財産だということがわかります。
その限度では、遺産の詳細がわかることになります。
ただ、民主党政権下で国税通則法等の税務関連法が改正されましたので、取り扱いが変わっている可能性もなくはありません。
詳しくは税理士にお尋ねください。
【税務署がすべての口座を把握しているわけではない】
十数年前の話ですが、私が破産管財人に選任された破産事件について、破産者が財産隠しをしているのではないかとして、大阪の全金融機関に対し、関係口座の有無について照会を出したことがあります。
この時には、大阪管内の支店ベースで約900店舗の金融機関がありました。
合併等で現在はそれよりも少なくなっているでしょうが、いずれにしても支店数が膨大です。
税務署がその全てに調査を入れていることはまずないと思われ、被相続人や問題となる相続人の全部の口座を調査・把握している可能性は極めて少ないでしょう。