【質問の要旨】
賃料相当額を特別受益として引かれるのか
【ご質問内容】
裁判認知により相続人となりましたが、被相続人所有の空き家に住んでいた年数分の賃料(1000万円)を、特別受益として遺留分から差引くと言われています。
建物は、数年前に贈与の約束(契約書)があり、私(婚外子)の母が建替え、被相続人の死亡以前に母名義となっています。
土地は、私に遺贈の遺言があります。
それでも特別受益として賃料相当額を引かれなければならないのでしょうか。
【使用貸借であれば賃料の支払いは不要】
被相続人であるお父さん所有の空家をあなたが使用していたということを法律的に考えてみます。
お父さんがあなたに賃料を請求するようなことはなかったのであれば、あなたはお父さんから無償(ただ)でその家を利用することを認められたということになり、法律的には使用貸借という関係になります。
あなたの立場から言えば、無償で使用する権利(使用借権)をお父さんから与えられたということになりますので、賃料を支払う必要はないでしょう。
【使用借権が特別受益になる可能性がある】
ただ、あなたが、被相続人からただで使用する権利(使用借権)をもらったということが特別受益とされる可能性があります。
使用借権の価額については当該対象物件の5~10%程度の価値があるものだとされることが多いです(但し、裁判例の解説などを読むと10~30%ではないかという見解もあります)。
しかし、建物価額は評価証明額を前提として算定されることが多いですが、建物の評価証明額が極めて少額な場合も多く、そのため、上記の割合では使用借権価額が極めて少額になります。
一方で、被相続人であるお父さんは土地や建物の固定資産税分を負担しています。
その物件をあなたが無償使用しているのであれば、最低限、土地や建物の固定資産税分の支払い分程度は免れたという利益を受けていたことになり、その相当額が特別受益とされる可能性があります。
【建物贈与の影響】
建て替える前の建物は、生前に贈与されていますが、誰に贈与されたのかがご質問では明らかではありません。
もし、あなたに贈与されたのであれば、建物価額があなたの特別受益として持ち戻されますが、その場合の特別受益額は、《建物価額-使用借権額》でいう計算式で算定されます。
贈与があったとしても、あなたが使用借権を取得した事実は消えませんので、使用借権取得が特別受益となる点は否定できません。
但し、上記考え方はあくまで一つの考え方にすぎず、異なる見解もありえます。
【持ち戻し免除の可能性もあるので弁護士に法律相談を】
なお、今回のご質問から受ける印象ですが、お父さんとしては遺産への持ち戻しを免除するという意思をお持ちであった可能性もあります。
また、前項に記載したように使用借権を設定した後、その建物を取得した場合にどのような形で特別受益に反映させるかについても、弁護士により見解の相違がありえます。
いずれにせよ、今回のご質問が含む問題については、難しい点も多いので、近くの相続問題に詳しい弁護士に事情を詳しく説明され、相談されることをお勧めします。