※同じ方から2つに分けてご質問いただきましたが、回答は1つにまとめています。
【質問の要旨①】
使用貸借の価額と空き地について
【ご質問内容】
父親名義の土地に兄が家を建てています。両親とは同居していません。
両親への仕送りも無く、固定資産税も払っていません。
両親を訪問する事も年に数回です。
父がが亡くなりましたので、この場合使用貸借は、その土地の実勢価格のどの位が妥当でしょうか。
また、兄の家の土地の横に空き地があり、実質兄が使用していたのですが、その土地も使用貸借に入れるのでしょうか(そこには特に建物は建ってはいません)
【質問の要旨②】
使用貸借とは?
【ご質問内容】
基本的な質問で申し訳ありませんが、使用貸借で計算された金額は、全体の遺産金額に含め、相続計算をするのか、使用貸借をしている相続人だけで分割するのでしょうか?
遺産金額に含めて計算するのか、その他の相続人(特に配偶者)で計算するのでしょうか?
遺産金額に含めた場合、使用貸借者に贈与が発生しているみたいに、思えるので
【土地の無償使用と特別受益について】
亡くなられたお父さん名義の土地の上にお兄さんが建物を建築し、賃料の支払いもしない場合には、お父さんとお兄さんとの間で使用貸借契約が成立したものと考えていいでしょう。
特別受益との関係で言えば、お兄さんはお父さんから使用借権を与えられたのであり、この権利の設定により受ける利益を「贈与」されたことになります。
【空き地の使用について】
お兄さんはお父さんの空き地を使用していますが、これもその空き地を独占的に使用している(他の人が使えないような)状態であれば使用貸借が成立する可能性があります。
お父さんがお兄さんの使用を知っていたのであれば、それは暗黙の同意があったとして、使用借権が成立したとされる場合が多いです。
この場合も、この空き地の使用借権の贈与が特別受益になります。
【使用借権の価額】
土地を、賃料を支払って利用する場合には借地権とされ、国税庁の発表している路線価図でもその価額が明らかにされています(通常は更地価額の40~60%の範囲内であり、60%とされるケースが最も多いです)。
しかし、使用借権については裁判例などで更地価額の10~30%程度とされることが多いです(当ブログQ&A №321参照)。
これは使用借権が、借地権ほど強い権利ではない(土地が第三者に売却されれば、土地使用が認められないこともある)こと、又、存続期間等が契約内容や使用の実情等に応じて種々様々であり、裁判所としては、ケースバイケースで判断せざるを得ないからです。
ただ、これまでの相続案件での私の経験から言えば10%~15%程度で考える場合が多かったように思います(使用借権を更地価格の15%に相当すると判断した裁判例として、東京地判平成15年11月17日があります)。
【特別受益があるときの処理】
特別受益がある場合には、特別受益を遺産に持ち戻します。
今回の質問の場合であれば、借地権価額を遺産に加えます。
その後、遺産全体を法定相続分に応じて分割することになりますが、特別受益を受けた人はその使用借権分を先にもらったことになり、その分だけ、遺産からの取り分が減少します。
例えば、子が2人のケースで遺産総額が預貯金1000万円、特別受益が500万円とすれば、特別受益をもらった人は《特別受益:500万円+預貯金250万円》を、又、もう一人の子は《預貯金750万円)を取得することになります。