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実例Q&A

★子どもの国民年金掛金と特別受益【Q&A №527】

2016年9月7日


【質問の要旨】

肩代わりした国民年金約240万円は、特別受益に該当するか

記載内容 年金 継続的 扶養

【ご質問内容】

20才から支払う義務がある国民年金「金額240万円程度」を肩代わりして支払いました(アルバイトで支払い能力がなかったため)。

そろそろ遺言書を作成すべき時期かと思案していますが。

この過去に支払った金額は特別受益に該当するのでしょうか。

宜しくお願い申し上げます。

(素浪人)


【事案によっては特別受益にあたる場合もある】

被相続人であるあなたが、相続人に対して「生計の資本としての贈与」をした場合、特別受益として、遺産分割の際に遺産に持ち戻されます(当ブログQ&A №164Q&A №334等参照)。

問題はどのような金銭等の提供が、《生計の資本》としての贈与になるかです。

例えば、相続人である長男の自宅買入資金として500万円を援助したというのであれば、特別受益になることは間違いありません。

しかし、今回のご相談は、毎月数万円程度の金銭を渡した、あるいはその程度の債務を立替支払いしたような場合です。

このような、毎月は少額でも多年にわたると金額も大きくなるような場合に、特別受益になるかどうかという問題になります。

お金を渡していれば贈与ではないかという反論が出そうですが、被相続人である親が子である相続人にお金を渡す場合、親の子に対する扶養義務の履行として渡しているとされる場合もあり、その場合には渡した金銭は特別受益にはなりません。

【判断基準はどういうものか】

次に、扶養義務の履行か否かを判断する基準は何かということが問題になります。

遺産の総額、一度に渡されたものかどうか、又、月々の支払い等であればその額はどうか、渡された期間やその交付する理由などが判断基準となるでしょう。

過去の家庭裁判所での審判例では、遺産総額や被相続人の収入状況から考えて、月に10万円に満たない送金は扶養的金銭援助にとどまるが、月10万円を超えるものは生計の資本としての贈与になり、特別受益になると判断したものがあります(東京家審平成21年1月30日・家月62巻9号62頁)。

(詳しくは【相続判例散策】毎月の送金が特別受益にあたるのか?をご参照ください。)

【遺言書の作成上の注意】

これから遺言書を作成するが、被相続人のした国民年金の立替分を特別受益にならないようにしたいというのであれば、次のような方法を考えられるといいでしょう。

① 国民年金立替分については《持ち戻しの免除する》との意思を遺言書に明記する。

② なぜ、持ち戻しの免除をするのかという理由を遺言書の付言事項として記載し、併せて他の相続人が特別受益という問題を持ち出さないようにという内容の遺言者の希望を記載する。

これらの①及び②の方法の双方を採用し、その内容を遺言書に記載することで解決されるといいでしょう。

 

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