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実例Q&A

被相続人との共有マンションの家賃の扱い【Q&A №546】

2016年12月6日


【質問の要旨】

マンションの共有者である長男が、被相続人に対し収益の返還請求権を持っていると主張している

記載内容 共有物 賃料 時効

【ご質問内容】

被相続人と長男が一棟建て賃貸マンションを所有していました。

分割協議が進まず調停へと進む状況です。

これまで賃貸マンションの収入は被相続人が管理し、収入も返済や税金の支払も行ってきました。

長男代理人は2分の1所有の賃貸マンションからあがる収益は本来自分の物であり、返還請求権をもっていると主張しています。

この主張は認められるのでしょうか?

またこの被相続人に対する債権は何年前まで有効なのですか?

時効はあるのでしょうか。

この債務を遺産に加えると他の相続人の相続分はなくなるといっています。

(mujun)


【兄が本当に共有者であるかどうかを念のために確かめる】

お父さんと兄で共有持ち分が各2分の1であるのに、被相続人が賃料収入全部を得ていたということですが、2つの面で疑問(あるいは問題といってもいいでしょう)がありそうです。

まず、第1は、兄の持ち分2分の1というが、実質はお父さんが建築資金を出しており、名義だけを長男のものにしていたのではないか?という点です。

この疑問は①長男名義の2分の1は実質上はお父さんの遺産ではないのか?

あるいは②お父さんがお兄さんに建築資金を生前贈与(特別受益)したのではないか?

という問題に発展しますので、念のために上記の①及び②の観点から、是非、調査されるといいでしょう。

なお、ローンがあるようですので、その借入名義がお父さんだけか、兄でもあるのか、又、頭金などは誰が負担したのかを、お父さんの取引履歴等なども参考にして調査されるといいでしょう。

【兄はお父さんに賃料の返還請求はできない可能性が高い】

次に、兄としてはお父さんが賃貸に出していることぐらいは知っていたと理解するべきでしょう。

にもかかわらず、賃料の半額を請求しなかったのはなぜかという疑問があります。

この点については、賃貸を始めるときにお父さんと兄との間で、お父さんが賃料を全部取得するということで合意(暗黙を含めて)があり、管理はお父さんがし、賃料収入はお父さんがもらう、ローンの支払いや固定資産税の支払いは全てお父さんがするとの合意があったと考えるのが普通の理解でしょう。

もし、その前提が正しいとすると、お父さんが全額を取得することを、兄は了解していたのですから、兄が被相続人であるお父さんに不当利得等の請求はできないことになります。

【仮に無断で賃貸していた場合には】

しかし、万一、お父さんが兄に知らせず、勝手にマンションの賃貸をしていたのだとすると、兄からお父さんに対して不法行為による損害賠償請求及び不当利得返還請求として賃料額のうちの兄持ち分額に相当する金額を請求することが可能になります。

この場合、お父さんが兄の分のローンの支払いをし、かつ固定資産税も立替支払いをしていたのであれば、その分は請求額から控除されますし、場合によれば管理料相当分も控除することも可能です。

なお、不法行為で請求する場合には、勝手に貸していることを知ってから3年で、不当利得返還請求をする場合なら10年で請求権が消滅時効にかかりますので、それ以前の分は時効を主張されると、兄は請求できないということになります。

【兄請求の債務を遺産に加えるどうなる?】

今回の質問のケースでは兄の請求が成立しない可能性があります。

仮に請求できるとしても、お父さんが賃料から兄のローンの支払いをし、かつ、兄の分の固定資産税も支払っていたというのであれば、法的に認められる返還額はそれほど多額にはならず、請求すると遺産が無くなるようなことはないと思われます。

【特別寄与について】

兄に賠償あるいは返還請求ができない場合でも、賃料全額をお父さんに取得させたということが特別寄与として認められ、兄がその額を取得できる可能性はあり得ます。

ただ、この場合でも、兄の分のローンの支払いや固定資産税の立替支払い、管理料相当額等が考慮されますので、兄の寄与分としてはそれほど多くないように思います。

 

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