※被相続人に対する求償権【Q&A №546】に関する再質問
【再質問】
ご回答のご説明わかりやすかったですが、私の説明が良くなかったようです。
相続対策として長男は祖父の養子となっていました。
質問の被相続人は父で、祖父が亡くなった際に父と長男(養子)は質問の賃貸マンションを相続しました。
長男は共有者ではありますが、父の生前に父が収入と費用、債務、税金などを支払う事を同意していたと思います。
申告していないですが現金で毎月8万~15万受け取っていました。(ただ現金手渡しなので証拠がありません)
ご回答にあるように請求が10年で債務や固定資産税を引けば相続財産がなくなるような額にはならないと思います。
残念なのは月々支払っていた現金が振り込みでないため、母の証言だけなことです。
これが実証できれば合意の証拠にもなりますし、請求金額からも差し引くことができます。
この主張はしていくつもりですが、良い方法があればご教授いただけると幸甚です。
前回の回答では、売買で取得したことを前提としていました。
しかし、今回の再質問では、お祖父さんの亡くなった際にお父さん(今回の被相続人)とその子(祖父の養子にでもある)が相続でマンションを共有取得したという前提ということが判明しました。
この点に関する回答は次のとおりとなります。
【金銭支払いの合意がある場合】
お父さんが賃貸収入を全部もらうこと、費用や債務、税金は父が負担すること、更に金銭をお兄さんに支払うことが合意されていたのであれば、マンションの利用に関してはその合意で解決していることになり、定められた以上の請求はできないということになります。
ただ、その合意に基づく支払いがされていないとすると、その支払いのない分がお父さんの債務になります(兄から父に対する合意に基づく金銭支払い請求権)。
なお、参考までに言えば、この請求権は5年で消滅時効にかかります。
次に、お父さんとお兄さんの合意が証明できない場合には、お兄さんからお父さんへの賃料相当の金額を返還せよという請求権(不当利得返還請求権)が成立する余地があります。
この場合の消滅時効の期間は10年間になります。
【支払いの証明はなかなかむずかしい】
支払いの証明は金融機関を介しての送金なら証明は簡単ですが、現金で手渡しということであれば、それを証明するのはなかなか困難です。
おそらく領収書もとっていなかったでしょう。
証拠としては、お母さんの証言しかありませんが決め手にはなりません。
又、8万から15万円と幅があるのも気になります。
いずれにせよ、お母さんから事情を詳しく聞き、矛盾のないように整理した上で、お兄さんの代理人に説明して、納得してもらうしかないでしょう。
【無償使用という話があったという展開は・・】
お父さんが賃料の全額を取得しているにもかかわらず、持ち分をもっているお兄さんがそれになんらの異議を唱えなかったというのであれば、それも不思議な話です。
ただ、マンションの使用に関する合意の証明ができない場合には、お兄さんとしては無償でマンションを父に貸したという主張もできるかもしれません。
しかし、この場合、お兄さんがマンションを無償でお父さんに貸与したことから、お父さんの遺産が増えたという主張(兄の特別寄与)が出てくる可能性があります。
【弁護士と相談することも考える】
いずれにせよ、本件については解決の妙策はなさそうです。
できれば相続に詳しい弁護士と相談され、具体的な事実を説明した上で、お兄さんの代理人に対する対応を決められるといいでしょう。