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実例Q&A

兄の使い込みと居直りへの対応【Q&A №561】

2017年3月7日

 

 

【質問の要旨】

・父死亡。兄が多額の不正出金をしていた。

・相談者が金融機関に連絡したことで口座が凍結し兄は激怒。

・今後どうすればいいか。

【ご質問内容】

父親が昨年秋に死去しました。

私の兄は、管理していた父親名義の預金通帳からの使い込みが判りました。

現在兄は遺産分割協議に協力しないばかりで困っています。

父は預貯金や株を所有していました。

父が10年前に脳梗塞発症後、半身不随になった後、24時間完全介護の老人ホームへ入所しました。入所時から、兄が、父親の全財産の管理を兄が預かっておりました。

当時から兄はATMで現金を引き出しており、毎回限度額上限いっぱいの50万円や100万円の金額で、ホームの兵庫から遠く離れた東京の兄自宅近くのATM引き出してました。

その金額が、10年間6000万円を超。父の同意が、有ったのか分からない一括保険金払い3000万円一括保険金払年金型生命保険にも入っています。

この保険からの年金の入金は、父の口座入金でしたが、保険金払い受取人が兄。

この年金の振り込み口座からも、兄は引き出しておりました。

父親の死後になって、心当たりの銀行証券会社に問い合わせたところ、わかりました。

兄は、死亡届を金融機関に未提出。

父の死後の翌日や翌々日もATMから50万円や100万円単位で引き出していたのが判明しています。

私が金融機関に、死亡届を取引明細取り寄せと同時にしたことにより、父親の預貯金口座から、現金の引き出しが出来なくなった兄は激怒してます。

兄からは連日の暴言メールで、私は仕事も手につきません。

夜も眠れません。

兄は「お前はいらぬ事はせんでいい。お前の下らん策で迷惑きわまりない。」と、激しく私をなじる一方です。

遺言状も存在しないようです。

私はどうすればよいでしょう。

父の遺産を私が一部でも引き継ぐ事は諦めて、凍結した銀行口座を解除して兄に任せるべきなのでしょうか?

せめて、今ある預貯金のみの50%の分割で我慢すべきなんでしょうか?

(はなこ)

 

 

【あなたは兄と同じ割合の遺産をもらう権利があります】

遺言書がない場合は、法定相続人は法定相続分に応じて遺産を相続します。

配偶者がいないことを前提とすると、今回のような子が2人のケースでは、遺産はあなたと兄が同じ割合で相続します。

生前に、兄が父の口座から無断で出金していたのであれば、父は兄に損害賠償請求ができることになります。

父死亡後は、その損害賠償請求権はあなたにも相続されますので、生前の引き出し分についても法定相続分(2分の1の限度)であなたは兄に請求できます。

【何よりも先に取引の可能性ある金融機関等に連絡する】

既に金融機関などに履歴を照会しているようですが、もし、他に父が利用していた金融機関や証券会社などで連絡していないところがあれば、父の死亡通知を緊急に出す必要があります。

連絡があれば、金融機関等は父の口座を閉鎖しますので、預貯金の引き出しは、ATMを含め、原則できないようになります。

まず、父が使っていた可能性のある所には全て死亡通知を出し、兄のこれ以上の出金を防止するというのが、損害拡大の防止のために必要不可欠です。

(※相続法改正の影響:末尾の相続法改正についてのコメント参照)

【生前の引き出し分の調査と分析】

兄が父の生前に引き出した分は、損害賠償請求権として遺産になります。

ただ、大金が出金されているということだけでは不十分です。

その出金を兄が父に無断でしたということをあなたが証明する必要があります。

その証明のため、預貯金の払戻票などを取り寄せし、筆跡などから、兄が出金に関与したという証拠をできるだけ集める必要があります。

ATMの場合には、筆跡などは残りませんが、取引履歴を見ることにより、どこに置かれた機械で出金したのかがわかり、出金者の特定に役立ちます。

これらの証拠を集めることは、後に述べる仮差押えという手続きをするために絶対に必要です。

【カルテの取り寄せも考える】

無断出金の証明にカルテが役立つことがあります。

父は脳梗塞であったようですので、入通院された病院や医院のカルテを取り寄せましょう。

カルテの記載内容や看護日誌の内容の点検等を検討すると、父の判断能力(意思能力)がわかります。

もし、父に意思能力がなかったのなら、その時期の出金は本人ではないがしたであろうという重要な証拠になる可能性が高いです。

また、父が入院時期に多額の出金があれば、それも兄が関与したと考える余地もありそうです。

【保険契約及びその一括払い金の出金の調査も必要】

保険金の契約書には父の署名があるはずですので、保険会社から契約書の写しをもらって、受取人の変更がされていないかどうかも検討しましょう。

保険金は原則として遺産にはなりませんが、多額の場合には遺産と同様に扱われる可能性もあります(Q&A №658ほかご参照ください)。

父の意思能力のない段階で受取人の変更などされていれば、その変更は無効ですので、是非、保険会社に資料請求をされるといいでしょう。

【急いで手続きする必要があるのなら、弁護士に早期に相談を】

預貯金から引き出した金銭を兄が使ったのか、あるいは保管しているのかは明らかではありません。

無断出金の多くは、早期に何らかの手を打たないと費消されることが多いです。

裁判に勝っても、時間がかかり、その間、兄がお金を使い切る場合も多いです。

そのため、もし、兄の財産が判明しているのなら、早期にそれを動かさないようにする手続き(《仮差押え》といいます)などを考える必要があります。

この手続きは迅速にしなければならず、また、裁判所との交渉も必要ですので、弁護士と相談され、早期の段階で、手続きを依頼されることをお勧めします。

※相続法改正の影響

今般の相続法改正で、遺産分割前であっても一定額までは預金の引き出しができるようになりました。

また、特別受益のある相続人が、相続開始後に財産を処分した場合、処分された財産を遺産分割時に遺産として存在するものとして遺産分割をすることが可能になりました。

相続法改正についての詳細は、以下の相続法改正ブログをご参照ください。

相続法改正4 遺産分割前の預金払い戻し制度ができました

相続法改正5 相続開始後の共同相続人による財産処分

 

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