【質問の要旨】
祖父からの生前贈与を母の遺産分割時に証明する必要があるのか?
【ご質問内容】
昨年母が亡くなり相続が開始致しました。
父は既に他界しております。
私は25年前父方の祖父から1200万円の生前贈与を受けました。
両親も承知のことです。
その後一人息子だった父が祖父から相続を受け他界、母がまた全てを相続し昨年他界致しました。
現在兄姉私の3人が相続人です。
遺産分割の話し合いの際弁護士をつけた姉は1200万円は特別受益だと主張、違うのであれば祖父から受けた生前贈与を証明せよと言われておりますが25年前のことですので証明できずにおります。
調停員からは裁判になる可能性が高いといわれました。
途方に暮れております。
※敬称略とさせていただきます
【一般に祖父からの贈与は無関係】
今回の遺産分割は母の遺産です。
そのため、特別受益で検討すべきなのはあくまで「母からの生前贈与の有無」に限定されます。
もし父や祖父からの生前贈与があったとしても特別受益にはあたりません。
あなたとしては「祖父からの贈与の有無は本件に関係ない。」と回答すればそれで済みます。
【例外的に特別受益とされる場合がある】
ただ、事情によっては例外的に祖父からの贈与が実質的には母の贈与と同視できる場合があります。
たとえば、親が娘の子(孫)に学費を贈与した場合、直接贈与を受けたのは孫(祖父から孫の口座に直接振り込み)であっても、本来は娘が負担するべき学費であることを考慮し、実質的には娘に対する贈与だと扱われることがあります。
ご相談ではそのような例外的事情はなさそうですが、参考までに紹介しておきます。
【姉の側で立証する必要がある】
他方で、あなたは姉の側から「祖父からの生前贈与を証明せよ」と言われているようですが、そのような証明をする必要はありません。
母からの贈与であり、母の遺産の特別受益であるというのであれば、その証明は姉の側でするべきことであり、あなたの側で「祖父からあなたへの贈与であること」を立証する必要はありません。
【調停は互譲で解決を図るもの】
以上のとおり、あなたとしては、特別受益であることの証明は姉側でするべきであると述べるといいでしょう。
調停はあくまで話し合いですので、あなたがどれだけ正しい主張を述べても、姉が解決案を了解しなければ裁判になってしまうことはやむをえません。
もし、あなたが裁判を望まないというのであれば、どこかで妥協点を見つけるしかありません。
その場合でも、あなたとしては、まず正しい言い分をしっかりと主張した上で、妥協できる点を探るという立場で対応されるといいでしょう。