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実例Q&A

自筆証書遺言は、絶対に遂行されるのですか【Q&A №608】

2018年5月11日


【質問の要旨】

遺言があり、養育費の未払いがある場合は取り分はどうなる?

記載内容  養育費 遺言 遺留分

【ご質問内容】

父が亡くなり、遺言書が出てきました。

両親が離婚したので、私は生後3か月で母に引き取られました。

離婚の原因は、父と後妻の不倫です。

母は、慰謝料も請求した養育費も支払われず、仕方なく泣き寝入りしました。

父は、私が成人するまで一度たりとも養育費を支払わず、逃げ得したことになります。

そんな父が亡くなり、遺言書に後妻の長男に全ての遺産を譲渡すると書かれた遺言書が出てきました。

父親としての責任と義務を全く果たしてこなかったのに遺言書通りになるのでしょうか。

未払いの養育費は、5パーセントの法定遅延損害金を加算すれば、3,000万円以上になります。

 
(ミッキー)

 

 ※敬称略とさせていただきます


【遺留分を請求することができます】

まず、「後妻の長男に全遺産を遺贈する」という父の遺言ですが、仮に遺言が有効であるとしても、あなた自身には遺留分という権利が残されています。

遺留分とは、あなた自身が本来有していた法定相続分の2分の1の限度で、財産を遺贈された方(今回は後妻の長男)に請求することができる権利のことです。

遺留分を請求することを法律では「遺留分減殺請求」と呼びますが、具体的な遺留分の計算は、相続人が①後妻と②後妻の長男、そして③あなたの3人のケースの場合、次のように計算されます。

(父の相続人)・・・あなた、長男、後妻の3名と仮定した場合

(本来の法定相続分)・・・後妻 → 2分の1                

後妻の長男 → 4分の1                 

あなた → 4分の1

このケースですと、あなたの遺留分は法定相続分(4分の1)の2分の1ですので、全体の8分の1と計算されます。

このように、遺言があってもあなたは遺留分を請求し、遺産を一部受け取る権利があります。

なお、遺留分は遺留分の侵害(=遺言の内容)を知ってから1年以内に(内容証明郵便等で)請求を行わないと時効消滅してしまいます。

くれぐれもこの点はご注意ください。

【取り決めた未払養育費や慰謝料は承継される】

今回は養育費や慰謝料の未払いがあるようです。

まず、なんらの約束事(書面)もしておらず、単に父から養育費をもらっていないだけ、ということであれば、そもそも養育費は請求できません。

しかし、書面等で金額や支払時期の取り決めをしていたのであれば、一般のお金の支払義務と同様に請求でき、未払いがあればお父さんの債務として、これも相続分に従って分割され、各相続人に引き継がれます。  

(なお、慰謝料は一般に母(前妻)の権利ですので、権利者はあなたではないことにご注意ください)

【養育費も一部は相続で消滅する】

上記のケースでは、未払いの養育費について、後妻が2分の1、後妻の長男が4分の1の支払義務を引き継ぎます。

しかし、4分の1の限度ではあなたも支払義務を引き継ぐことになるため、あなたが引き継いだ養育費の4分の1は権利と義務が相殺されて消滅し、請求できなくなることにご注意ください(このことを法律上は「混同」と呼びます)。

【実際には時効などハードルは高い】 

また、養育費の請求にはもう一つ大きな問題があります。

養育費もお金の貸し借りと同様、時効により消滅します。たとえば養育費の支払時期が毎月末日払いなど定期的な支払いの場合、毎月の支払日から5年で時効消滅します。

そのためたとえば20歳で支払期間が終了した養育費は、あなたが25歳を超えていれば時効で全部消滅している可能性があります。

もっとも、途中で一部支払いがあったなどの事情があれば時効が中断することもありますので、ご心配でしたら遺留分の請求の見込みなども含め、お近くの専門家に一度ご相談された方がよいでしょう。  

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