【質問の要旨】
高額療養費の還付と単純承認
【ご質問内容】
2月から父(71歳)が入院しており、3月末に転院をしました。
現在も同じ病院で入院しています。
先日、健康保険組合から「高額医療費支給申請書のお知らせ」が届き、組合に聞いたところ、現在の入院先は今でも入院をしているところ+訪問歯科にかかっていることから対象ときき、4月~9月までの申請書をだしてしまいましたが、病院からそろそろだろうと連絡がありました。(支給は3か月後)
お恥ずかしながら父には借金はあれど、保険もかけておらず、貯蓄もありません。
自分の洋服や靴、鞄、祖母の使っていたタンスくらいなもので、財産になるようなものはほぼありません。
どう考えてもマイナス財産しかないため家族全員放棄手続きをするつもりでしたが、高額医療費支給申請を行い、還付されると相続とみなされるという記載を見つけました。
父が被保険者であり世帯主です。
また、母のみ、扶養に入っています。
受取は母宛てにしています。
保険の割合は2割負担で、同一入院先である場合、4か月目以降は57600円の負担から44000円になると聞いていたのですが、病院からわからないといわれ、ずっと毎月57600円を払い続けています。
せめて4か月目以降の過剰支払い分は返してほしいのですが、生前に既に申請している高額医療費の支給を受けてしまった場合、相続放棄はできないのでしょうか。
また、区の助成金(紙おむつ代)の申請もしているのでそちらも心配です。
※敬称略とさせていただきます
【高額療養費の還付金も、被相続人の財産】
高額の療養費を支払った場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻されます。
このような金銭を高額療養費還付金と言います。
ご質問では、父の医療費ですので、その高額療養費の還付請求権は父のものになります。
そのため、還付金請求をした場合に、その請求に基づき支払われる金銭は父のものであり、遺産の一部となります。
そのため、相続開始後に還付金を取得すると、相続放棄の手続きをしていても、遺産を取得したものとして、相続放棄の効果がなくなります。
なお、生前に還付金請求に基づく支払いがあり、それを父から相続開始前にもらったというのなら、相続放棄にはなんら影響しません。
【あなたが医療費を支出しているのなら、債権者になる】
現在、父の財産から医療費を支出しているのなら、上記に記載したとおりですが、あなたがご自身の財産から父の医療費を出しているのなら、あなたは、父の医療費分を立替えている債権者ということになります。
そのような債権者としての立場で、父の死後に支払いされた還付金を受け取ったので、相続人として受け取ったのではないという主張も考えられます。
しかし、その場合、父の遺産から医療費立替分を支払う手続きをあなたがすることになります。
そうすると、その支払うという立場ではやはり遺産の処分に関与したことになり、単純承認とみなされ、相続放棄が認められないということになります。