【質問の要旨】
・6年前に亡くなった息子の葬儀費用の立替分(50万)を喪主から返してもらいたいが、時効にはならないか?
・喪主は、息子の妻(嫁)。
【回答の要旨】
・時効は10年。6年経っても請求できる
・喪主が立替金を支払う義務がある
・葬儀費用を葬儀に出席した相続人が負担するという考え方もある
【ご質問内容】
2013年9月に遠隔地に住んでいる43歳の息子が心不全で急逝しました。
喪主は息子の嫁が務めましたが、心労だろうとの思いから香典の開封集計は嫁が立ち合いの上で近親者4名で行いました。
私はもちろんですが、嫁には相続する財産もなく生命保険金が支給されるまで金銭的余裕が無いだろうとの思いやりから、葬儀社やお寺への支払いは香典だけでは50万円ほどたりず不足分を私が立替えて支払いました。
後日、収支報告書を作成し嫁に渡しましたが、立替えた件は報告書を見ればわかるだろうと敢えて口頭での報告はしませんでした。
遠隔地に住んでいるので、その後顔を合わせたのは数度で 先日、7回忌法要をしましたが金銭の話は切り出しにくく、嫁から話があるかと思っていましたが何もありませんでした。
もしかしたら支払う気持ちが無いのではないか?と不安になりご相談させて頂きます。
喪主に代わって立替えたお金を6年以上経った今でも支払ってもらうことはできますでしょうか?
ご回答よろしくお願いします。
(与太郎)
※敬称略とさせていただきます。
【時効は10年。6年経っても請求できる】
まず、今回のように6年も経つと今更葬儀費用の話を言い出しにくい、というのが人情だろういうお話はよく理解できます。
しかし、法律上はこのような個人間の立替金は時効期間が10年です。支出時から10年間は返還請求ができますので、現時点では問題ないでしょう。
これを前提に、以下返還請求できる金額について回答していきます。
【喪主が立替金を支払う義務がある】
今回のお話を整理しますと、葬儀費用は香典から支払い、不足額は追加であなた(被相続人の母)が50万円ほど立て替えて支払ったとのことです。
葬儀社は喪主に費用を請求しますので、あなたとしては喪主に立替えた葬儀費用を請求することになります。
喪主としては、葬儀社から請求されれば支払いをする立場ですので、あなたは立替金を喪主に請求することができます。
【葬儀費用を葬儀に出席した相続人が負担するという考え方もある】
ただ、喪主が立替金の支払い義務があることを前提としても、喪主が最終的に、葬儀費用の全部を負担する必要があるのでしょうか。
葬儀費用の負担者については法律に明確な定めがなく、裁判所の判断も扱いが分かれています。
最近の裁判例の傾向としては、基本的には葬儀内容を手配した喪主が全額負担し、香典も喪主が全額受け取るという判断が多い印象があります。
家裁の遺産分割の調停では、葬儀に出席した相続人に対して、葬儀費用が適正であるということを前提として、分担をしてもらう方向で話を進めることも多いです。
もし、その方向で話しが進むのなら、立替金のうち、あなたの負担分(もちろん葬儀費用から香典を引いた残額を、喪主を含む出席相続人の数で分割負担することになると思われる)という解決も考慮しておくといいでしょう。
(なお、相続ブログNo.560に同様の論点が掲載されていますので参考までに。)