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実例Q&A

★存命中の母の取引履歴を調査する方法【Q&A №370】

2014年4月30日


 

【質問の要旨】

認知症の母の預金が少なくなっている。

母の口座履歴と妹家族の口座履歴から不正引き出し等がないかを調査できるか。

【ご質問内容】

夫の転勤の関係からずっと母親と妹夫婦が母親の家で同居して暮らしていました。

5年ほど前から母親が認知症になり、私も働いていたことから面倒を妹夫婦にお願いしていました。

先日、急に妹が癌でなくなり妹の夫から母親名義のわずかな預金通帳を渡されました。
(後から聞いたのですが1年ほど前から癌の宣告受け、余命1年と医者から言われていたそうです。)

もともと郵便局に1000万以上の預金があり、母は、借家・駐車場や年金・父の戦争の恩給などもあったことからある程度収入もあり、通っていた介護施設等も安価であったことから明らかに預金の残高が少なくなっているようです。

母の死亡保険の受取人も勝手に自分の娘に書き換えたりしていたことから、余命が短いので母の預金や財産を自分の娘に残そうとしたようです。

まだ認知症の母がおり私が面倒を見る必要があるので、可能であれば母の口座履歴と妹家族の口座履歴から不正引き出し等がやり取りなどがなかったかを確認 したいのですが可能でしょうか。

 

(ピトニオ)

 

 

【生存中はあくまで他人の口座】

相続が発生した場合には、あなたが相続人の立場で被相続人である母の立場になり、預貯金の履歴の開示を請求することができます。

しかし、母が存命ですので、親子でも他人ですので、プライバシーを考慮して、金融機関や保険会社(以下、金融機関等といいます)は「親子でもあなたと母は別人。別人に口座情報は開示できない」と回答するでしょう。

これは、あなたが弁護士に依頼しても同様で、やはり他人である母の口座の調査はできなません。

【母が認知症だと代理人にもなれない】

ただ、金融機関等によっては、母の委任状があれば、あなたを母の代理人であるとして、預貯金口座の取引履歴などを開示してくれる場合があります(必要書類や回答する範囲は金融機関等によりさまざまです)。

しかし、母が認知症ですと(認知症の程度次第ですが)、あなたに委任するだけの判断能力はないとされる場合があり、結局、このような場合、委任状を使った照会もできない可能性が高いでしょう。

【後見人に調査してもらうしかないが・・】

もし母の認知症が重度であれば、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらい、成年後見人として母の口座を調査する方法があります。

ただ、今回のケースでは、家庭裁判所としてはあなたも妹も後見人に選任せず、第三者を後見人に指定すると思われます。

その理由は、今回のように家族間にお金のことでもめ事があるケースでは、裁判所は家族を後見人に選任せず、中立公平な第三者(司法書士や弁護士等)を選任することが多いからです。

ただ、後見人は将来に向かっての母の財産の保全をするのが通常です。

そのため、過去の母の預貯金の履歴などを調べるかどうかはあくまで後見人と裁判所の判断にゆだねられます。

そのため、後見人申立てをする場合、妹による取り込みがある可能性を指摘し、後見人や裁判所に《調査しなければ》という気持ちを起こさせる必要があるでしょう。

なお、仮に後見人が過去の母の取引履歴を入手しても、少なくとも母が生きている段階では、他人であるあなたには開示されませんが、将来、相続を開始した時に後見記録を見るなどの方法も考えられ、その時に役立つと思います。

【今、するべきことは・・】

以上に説明したように、結局、現時点では金融機関に対して、母の口座を調べる方法はありません。

他方で、将来の話にはなりますが、母の死亡後は母名義の預金を調査することができます。

ところがこの場合でも、妹さん名義、あるいは妹さんのご家族の口座は調査できませんので、その点はご注意ください。

また、通帳が手元に戻ってきたようですが、キャッシュカードで引き出される心配もありますので、念のため金融機関等に他人が預貯金の出金や解約をしに来ても応じないよう申し入れをすることも必要です。

この申し入れは、本来母(あるいは成年後見人)が行う権限です。

しかし、たとえ権限がなくともご家族から申し入れがあれば、銀行としては母以外の他人が引き下ろしに来た場合には本人である母に確認するなど、慎重な対応をする可能性があり、不正出金を防ぐことができるかもしれません。

参考までにいえば、このような申入れは内容証明という形で証拠を残しておかれるといいでしょう。

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