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実例Q&A

不当利得返還請求と遺留分【Q&A №652】

2019年7月3日

 

【質問の要旨】

父が死亡。

相続人は後妻と相談者(二名)。

遺言書があり、後妻に遺留分減殺請求をした。

寝たきりの父には年間700万円の収入があるのにも関わらず、5年間のうちに後妻が1500万円引き出している。

(後妻曰く、生活費1000万円と葬儀費用500万円)

この1500万円の不当利得返還請求をした場合、請求額はいくらになるか?

【ご質問内容】

公正証書遺言がある時の使途不明金は遺産分割の対象になるのでしょうか。

下記概略です。

父が他界して相続が発生しました。

相続人は後妻さんと私(先妻の子)の計2名。

公正証書遺言があり預金(500万円)は後妻さんと私(先妻の子)と折半、マンション1部屋(時価2,500万円)と「その他一切の財産・負債も含む」は後妻相続となっています。(後妻さんには遺留分減殺請求済み)

父(要介護5の寝たきり)の移動明細(銀行)から後妻さんによる5年間で1,500万円の預金引き出しが確認されたので後妻さんに説明を求めたところ1,000万円は生活費,残り500万円は葬儀費用等との回答でした。

父の年収は700万円ほどあり父の移動明細や後妻さんによる説明からは預金を引き出す必要はなかったと思われます。

仮に後妻さんにより引き出された預金(1,500万円)が、不当利得返還請求の対象になった場合、私が後妻さんに対しての請求額はどのように考えたらよいのでしょうか。

 

 
(フリーダム)

 ※敬称略とさせていただきます。

 

 

【不当利得返還請求権は誰のものか】

ご質問によると、後妻が5年間のうちに父の口座から、1500万円もの預金を引き出していたということです。

これが、父の意思によらずに引き出したものだということになると、おっしゃるとおり、父は後妻に対して、1500万円の不当利得返還請求権を有していたということになります。

そうすると、父の死亡により、上記返還請求権を誰が相続したのかが問題となりますが、遺言書によれば、その他一切の財産・負債は後妻が相続するとの内容になっているとのことです。

不当利得返還請求権は「債権」という財産ですので、「その他一切の財産」に含まれ、後妻がその請求権を全て相続すると判断されます。

そのため、あなたとしては、遺留分請求減殺をする必要があり、その遺留分の限度で不当利得返還請求ができるということになります(平成30年相続法改正によって遺留分に関する規定が改正されました。改正後は、不当利得返還請求ではなく、遺留分侵害額請求ということになるでしょう。結論に差はありません。)。

【あなたは、1500万円も含めて遺留分減殺請求をすることになる】

前項の不当利得返還請求権という債権も被相続人の遺産だということになりますので、遺留分を算定する際の基礎財産に算入されます。

従って、あなたの請求できる遺留分額もその分増えます。

《計算式》
遺留分計算の基礎となる遺産額:預金500万円+マンション2500万円+不当利得返還請求権1500万円=4500万円
あなたの遺留分額:4500万円×2分の1(法定相続分)×2分の1=1125万円
遺留分侵害額:1125万円-250万円(遺言でもらえる額)=875万円

以上の計算式で算定された875万円が、あなたが後妻に対して、遺留分減殺請求できる金額になります。

【父のための特別の使途であれば不当利得ではない】

ただし、後妻は、1500万円を引き出したことを認めているものの、1000万円は生活費に、500万円は葬儀費用に使ったと主張しているようです。

これに対しては、《あなたとしては父の年収が700万円もあれば、それ以外に1500万円もの引き出しをする必要はなかった》と主張されるといいでしょう。

ただ、例えば屋根の修繕費として、後妻が領収書等を示して父の特別の使途がために使ったことを立証できた場合には、その分はそもそも不当利得ではないと判断される可能性があります。

なお、葬儀費用は原則喪主負担ですが、分担すべき場合もありますので、念のため、領収書の提出を求めてみるといいでしょう。

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