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実例Q&A

不正出金と特別受益について【Q&A №573】

2017年7月31日

 

 

【質問の要旨】

母の預金を使いこんだ弟から遺産を取り戻せるか?

【ご質問内容】

先日、妻の母が亡くなりました。(父は既に他界)

妻は兄と弟の3人兄弟で、母は13年程前から弟と同居していました(住宅購入)。

母の遺産は定期預金など(推定6000万円程)で2年ほど前から弟が通帳管理し死亡前にはすべて弟の口座に移されていました。

贈与か不正出金か不明。

弟は遺産総額を開示もしません。

信託で契約を結び(金額不明)、死後、弟にお金が入るようにもしていました。

信託会社に詳細を聞いたところ、財産と遺留分対象とのこと。

住宅資金推定5000万円(弟名義)を、母が頭金援助(推定2000万円)、去年あたり母が(推定2000万円)を出してローン完済させたようです。

弟はギャンブル好きで他にも不正出金が多々あると推測し、まだ現金2000万円程は隠していると思われます。

お聞きしたいのですが、住宅資金援助は母の通帳開示請求から追及できるでしょうか?

また弟のローン支払いの通帳も開示請求して照合できるのでしょうか?

遺言書はないようですので、法定相続分の3分の1で請求した場合妻の相続分はどれくらいになるのでしょうか?

また、兄は相続争いに参加したくないとの事で、妻への譲渡証明書を書いてもらうつもりですが、その場合、不正出金の返還請求も、特別受益があった場合も兄の分と2人分の請求ができるのでしょうか?

どうぞご教授よろしくお願いいたします。

(papepon)

 

【兄の相続分譲渡を受けた後の相続分】

あなた(相談者)の妻は兄から「譲渡証明書」をもらうというお話ですので、これを相続分の譲渡と理解して、相談者の妻が兄の相続分をすべて譲り受けたことを前提として、以下のとおり回答します。
 
相続分譲渡後の相続分は次のとおりになります。

 相談者の妻・・・3分の2(兄の分を合算)
 弟  ・・・・・3分の1

その結果、相談者の妻は兄の持分も含めて不正出金の返還請求や特別受益の主張が可能となります。

【住宅資金援助は登記簿謄本と取引履歴を確認する】

さて本題ですが、住宅資金の援助とローン返済を行ったのは母なのか、それとも弟なのか、確認するには次のような手順で調べるのがよいでしょう。

1)登記簿謄本を取り寄せする

法務局にて、弟名義の住宅の全部事項証明書(登記簿謄本)を取り寄せし、不動産購入時期及びローン完済時期を調べます。

まず、購入時期は、登記名義が弟の所有名義に変更(売買)された時期です。

次にローン完済時期は、銀行の担保(抵当権)の抹消時期から判明します。

2)母の取引履歴と対比して調査する

次に、母が口座を開いていた金融機関から預金の取引履歴を取り寄せます(相続人であれば取り寄せは可能です)。

そして、登記簿謄本から調べた不動産の購入時期及びローン完済時期の取引履歴を確認し、同時期に、母の口座から多額の出金があるかどうかを確認します。

もし、購入時及び完済時の両方の時期に合致した出金があれば、その出金が頭金等の購入(あるいはローン完済)資金として使われた可能性があるといえるでしょう。

【さらに弟の口座宛の送金であることを確認】

出金が弟の口座宛の送金であったことが取引履歴の摘要欄や備考欄で確認できれば、弟に渡されたことが立証できます。

また、出金伝票の記載や筆跡を確認し、弟が出金手続きをとったことを立証すれば、裁判でも弟が出金を行ったことを追及できるでしょう(無断であれば不正出金になります)。

なお、(送金先となる)弟の預貯金口座の取引履歴を調べたいところですが、金融機関は「兄弟でも他人でありプライバシーがある」と言い、個人情報を盾にして、弟の同意がない限り取引履歴の開示に応じないでしょう。

【相続分の計算】

本件での相続分を計算するに当たり、今回の遺産分割で検討すべき遺産は

① 弟による母の口座からの不正出金 計6000万円
② 住宅資金贈与  計4000万円(頭金2000万円、ローン完済資金2000万円)
合計1億円

であるとして説明します。

① 不正出金6000万円は、母から弟に対する損害賠償請求権です。
② 生前贈与分4000万円は特別受益として遺産に持ち戻し、加算される分です。

① ②を合わせた遺産総額が遺産分割の計算上の金額になり、その額は(特別受益:4000万円)+(不正出金:6000万円)=1億円です。

この1億円を相談者の妻と弟の法定相続分に応じて配分します。

(今回は兄が相続分譲渡する結果、相談者の妻が3分の2の相続分を有します。)

(配分内容)
相談者の妻(相続分3分の2)・・・6666万円
弟(相続分3分の1)   ・・・3333万円 ― 生前贈与4000万円 ⇒ マイナス666万円

こう計算すると、弟はすでに生前贈与により4000万円を取得し、法定相続分の3333万円を超えて財産をもらっています。

そのため、弟は現存する遺産6000万円(上記①の母から弟に対する損害賠償請求権)から受け取るべき財産はありません。

6000万円はすべて相談者の妻が相続することになります。

ただ、相談者の妻としては、計算上、約666万円が不足します。

これは取得できないのでしょうか。

残念ながら、特別受益は生前贈与により超過額が生じた場合でもこれを返還させる制度ではないため、超過額を返還させることはできません。

その結果、相談者の妻は現存する遺産である6000万円(上記①の母から弟に対する損害賠償請求権)の限度で財産を受け取るしかない、というのが今回の結論になります。

 

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