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実例Q&A

葬式費用の負担者と香典の取得者【Q&A №560】

2017年2月16日




【質問の要旨】

・父の葬式代を叔父が立て替えた

・喪主は叔父が務めた

・遺産から葬式代を叔父に返したが、香典は誰が受け取るのか?

【ご質問内容】

母とは離婚、片親だった父がなくなり、葬式をあげる事になりました。

24歳の姉と21歳の私(2人姉妹)は知識も、まとまったお金も無いからと、何も費用などの相談も無いまま父の弟である叔父が喪主を務め、葬式費用も返してくれればいいからと立て替えてくれました。

後日かかった費用の領収書を受け取り、返すように言われ葬式費用は遺産から返したのですが、この場合香典は誰が受け取るべきですか?

実際に喪主を務めた叔父が香典を受け取るとしたら、父の葬式なので葬式費用は私と姉で叔父に返すべきなのですか?

(麗華)

 

【葬儀費用や香典は法律の規定がない】

葬儀費用は、(社会常識として)遺族すなわち相続人が負担するもの、という印象がありますが、そのようなルールを定めた法律の規定はありません。このことは香典でも同じで、法律にはっきりとした決まりはありません。

このように、葬儀費用や香典は法律上明確な規定がないため、葬儀を行った後の費用負担についてもめ事になったお話を法律相談などでよくお聞きします。

【裁判例も判断は分かれている】

葬儀費用について裁判所の判断は分かれており、

①相続人全員で分担するべきと判断した例

②喪主が負担するべきと判断した例

など様々です。

このように判断が分かれる理由としては、葬儀の内容や方法は地域や慣例により様々であり一律の判断を示しにくいことや、葬儀に相続人全員が参加していないため相続人全員に分担するのが相当ではないケースもある、というところにあるように思います。

このように裁判所の扱いも固まっていない状況ですが、最近の例では喪主負担の裁判例がやや多め、という印象がありますので、基本的には喪主負担だと考えてよいでしょう。

(なお、これはあくまで私見ですが、裁判所は葬儀費用を負担した人物が最終的に香典を受け取れるように物事を考えている印象は見受けられます。)

なお、この論点は【相続判例散策】兄弟の葬儀費用等を負担した場合に、その費用を甥姪に請求できるのか(名古屋高等裁判所 平成24年3月29日判決)も参考になると思いますので、合わせてご参照下さい。

【葬儀費用は喪主負担が基本】

裁判所の判断が分かれるとはいえ、最近は喪主負担すべきと判断される傾向があるため、これを前提に以下回答致します。

喪主負担説の考え方の背景には、喪主が葬儀の手配も行い内容も決定するのだから、内容を取り決めた人物が費用も負担すればよい、というものがあります(もっとくだけた言い方をすれば、葬儀をやりたい人が内容を取り決め、内容を決めた人が費用を負担する、というイメージです)。

この考え方からすると、今回叔父が喪主を務めてくれたのであれば、本来は叔父が費用を負担するべきという結論になりそうですが、今回は少し話が違っているようです。

【葬儀の主催者はあなた方と理解すべき】

今回は、叔父があなた方の年齢や金銭的事情に配慮して喪主を務めることを申し出て、あなた方もその提案に特に反対もされず葬儀を行われたようです。

そうすると、客観的にはあなた方姉妹が叔父の提案を受けて

・叔父が(あなた方に代わって)葬儀の手配を行う

・叔父が(あなた方に代わって)喪主の役割を代打する

・叔父が(あなた方に代わって)葬儀代も立て替えて業者に支払っておく

ことに合意した、と見るのが自然なように思われます。

つまり、叔父はあくまで代打として役割を演じただけであり、実質的な葬儀の主催者(=真の喪主)はあなた方姉妹と理解するべきと思われます。

よって、葬儀費用は主催者であるあなた方姉妹(相続人)が負担すべきでしょう。

(なお、あなた方は費用の詳細まで相談を受けていなかったことにご不満があるようですが、葬儀の手配を基本的に一任したのであれば、よほど非常識で高額な葬儀内容でない限り叔父の判断が尊重される可能性が高いと思われます。)

【香典は主催者に対する贈与ないし援助】

このとき、香典は誰が受け取るべきなのかが問題になりますが、上記の通り裁判所の判断が固まっていないので確実な回答をお伝えすることは難しい状況にあります。

ただ、香典には葬儀費用等の出費に対して金銭面で援助する意味もあります。そのため、あなた方が実質的な主催者として葬儀費用を負担したのであれば、香典も葬儀費用を負担したあなた方が取得するべきという判断を裁判所が下す可能性はあると思われます。

そのため、あなた方としては、葬儀費用の負担を認める代わりに香典は引渡すよう叔父に請求されるとよいでしょう。

 

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