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実例Q&A

被相続人の土地の使用貸借は特別受益となるか【Q&A №695】

2020年10月2日

【質問の要旨】

・土地は娘の住宅のために父が購入した

・法定相続人は養子を含め4人いる

・養子が相続する遺産からこの土地分の金額を差引く際の計算方法が知りたい

 

 

 

 

【回答の要旨】

・固定資産税相当額の支払いのみの場合は使用貸借に該当する

・使用借権が特別受益になる

・土地の賃料相当分は特別受益とはならない

・持ち戻し免除の可能性もあるので弁護士に法律相談を

【ご質問内容】

父が購入後10年間固定資産税支払い、その後、娘の養子縁組した夫が支払いをしている状態で相続発生、そして養子縁組は放棄せず、遺産分割の際に養子の相続分1/4よりこの土地の地代分を差し引く基準計算をしりたい。

遺産5000万のすると、養子1250万、土地購入2000万、相続発生時1000万とすると、マイナスできる土地の賃貸分はどのように計算するのかという意味です。時価の何パーセント?もしくは固定遺産税の何倍?、お教えください。なお法定相続人は養子を含め4人おり争族になっている。

 (争族なやみっこ)


 ※敬称略とさせていただきます。

 

【ご質問内容の整理】

ご質問内容を整理すると以下のようになります。

・父が死亡し相続が発生した。

・相続人は4人おり、その中に娘及び父と養子縁組した娘の夫がいる(娘の夫の相続分は4分の1)。

・父は生前に娘のために土地(購入費用2000万円、相続時1000万円)を購入し、10年間土地の固定資産税を支払っていたが、その後は娘の夫が土地の固定資産税を支払っていた。

・遺産総額5000万円(土地の価額も含む)。

また、ご質問内容からは明らかでない部分もありますが、娘の夫が父の生前に父名義のその土地を使用していたため、地代分を娘の夫が相続する財産の中から差し引きたいというご相談であることを前提に以下回答します。

 

【固定資産税相当額の支払いのみの場合は使用貸借に該当する】

 娘の夫が父から土地を借りる際に、固定資産税分のみ支払っていた場合、固定資産税相当額を借主が貸主に支払っていても、賃料に見合うような金額ではありませんので、通常は賃貸借ではなく、無償(ただ)の使用貸借という扱いになります。

 

【使用借権が特別受益になる】

相続人である娘の夫が、被相続人からただで使用する権利(使用借権)をもらったということが特別受益とされ、遺産に持ち戻されます。

その結果、使用借権をもらった相続人は、その相続分から特別受益の価額(つまり使用借権の価額)を控除されることになります。

使用借権の価額については、当該対象物件の5~10%程度の価値があるものだとされることが多いですが、裁判例やその解説などを読むと10~30%ではないかという見解もあり、必ずしも決まった割合ではなく、当該事案に応じてケースバイケースで決定されているように思われます。

本件のように対象が土地の場合は、相続開始時の土地の価額を前提として使用借権が算定されることが多いです。

そのため、本件では、仮に相続開始時の土地の路線価が1000万円であったとすると、使用借権の割合を仮に10%とすると持ち戻されるのは100万円になります。また、土地には使用借権の負担が付いているので、土地価額は900万円となり、遺産総額は4900万円となります。

その結果、娘の夫が相続する財産の計算は次の通りとなります。

《計算式》

娘の夫が相続する財産額

={4900万円(遺産総額)+100万円(使用借権)}

×4分の1-100万円(使用借権)=1150万円

 

もっとも、使用借権をもらった娘の夫が、相続で当該土地を取得することになった場合は、娘の夫が完全所有権を取得することを理由に、使用借権負担による減額を行わないとする考え方もあります(例えば、大阪高決昭和49年9月17日、福岡高決昭和58年2月21日の判例をご参照ください)。

その場合の計算式は、以下のようになります。

《計算式》

娘の夫が相続する財産額=5000万円(遺産総額)×4分の1

=1250万(1000円の土地+土地以外の財産250万円)

 

【土地の賃料相当分は特別受益とはならない】

なお、使用借権を特別受益とみると、賃料を支払わないのはその使用借権の具体化に過ぎず、賃料を別途特別受益とみる余地はありません。

このような見解に立って、賃料を特別受益としないという判例も存在しています(東京地判平成15年11月17日参照)。

 

【持ち戻し免除の可能性もあるので弁護士に法律相談を】

使用借権が特別受益になる場合であっても、被相続人である父としては遺産への持ち戻しを免除するという意思をお持ちであった可能性もあります。

また、遺産である土地に使用借権が設定されていたとしても、どのような形で特別受益に反映させるかについても、弁護士により見解の相違がありえます。

いずれにせよ、今回のご質問が含む問題については、難しい点も多いので、近くの相続問題に詳しい弁護士に事情を詳しく説明され、相談されることをお勧めします。

(弁護士 石尾理恵)

 

 

 

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