昨年母が亡くなりました。
父は10年前に亡くなっており、相続人は私と弟の2人です。
母の相続に際し、同居していた弟が母の預貯金を勝手に引出していたことが預金履歴の調査で判明しました。
母は10年前から介護老人保健施設に通入所しており、亡くなる4年ほど前には胃瘻を施し、痴呆も進んでおりました。
元々生活が質素だったこともあり、施設の費用を含め、生活費は年金で充分賄えていたはずですが、10年間で預金が1500万目減りしていました。
銀行の取引履歴は全て入手しており、預金の引出しはATMではなく窓口で行われているので、銀行に照会すれば弟またはその嫁が引き出したことは明らかになります。
調停や訴訟は不可避と考え弁護士に相談していますが、弁護士からは、「相手側は母親に頼まれただのいくらでも言い訳は言ってくるはずで、結局のところ隠した者勝ちになるのが実情なんですよね、、」と言われ落胆しました。
引出伝票などで弟が預金の引出しをしたことが明らかになっても、使い込みの充分な証拠にはならないのでしょうか?
ご教示ください。
【そんな弁護士いるんですね・・】
相談した弁護士が「相手側は母親に頼まれただのいくらでも言い訳は言ってくるはずで、結局のところ隠した者勝ちになるのが実情なんですよね」と言われたとのこと。
あなたががっかりと落胆する気持ち、よくわかります。
難しい面があるのは事実ですが、そこを何とかするのが弁護士なのに・・というのが私の率直な気持ちです。
【出金伝票を確認する】
まず、《誰が引き出したのか》という点が問題になります。
カードではなく、窓口で引き出したようですので、金融機関に払い戻し伝票のコピーをもらうといいでしょう。
過去10年間という長い期間にわたる預金の引き出しの場合、私が経験したケースでは、当初はお母さんが引き出していたが、途中から弟さんが代理人として、その後、弟さんがお母さんの署名を偽造して引き出していました。
もし、伝票の筆跡が弟さんであれば、弟さんが引き出したことになり、その分を不当利得あるいは不法行為を理由として、返還請求や損害賠償請求するといいでしょう(当事務所の扱った事件で返還を認めさせたケースは多数あります)。
次に、弟さんが代理人として引き出した場合にも、お母さんに渡したことが立証できない限り、弟さんが使いこんだという前提で対応するといいでしょう。
ただ、お母さんの筆跡であるとすると、その分は、お母さんが引き出したということになり、弟さんがお母さんから生前贈与してもらったというような証拠を探す必要があります。
なお、お母さんが多額の金銭を必要としないような場合、その引き出した金銭は手元現金として残っているはずです。
その点も訴訟になった場合の争点になります。
いずれにせよ、まず、出金伝票を取り寄せ、その内容を検討することが第一の作業です。
【使途は何かを確認する】
次に、《出金したお金を何に使ったのか》という点が問題になります。
既に死亡しているお母さんから使途を聞くことはできませんので、何に使ったかは弟さんから聞くことになります。
お母さんが多額の出金をして、弟さんに生前贈与されている場合も多いでしょう。
もし、生前贈与ならその分を遺産に持ち戻して、遺産分割計算されることになります。
ただ、同居している弟さんの生活費に使われたというのなら、親子間の扶養義務の履行として、その生活費として支出された分は生前贈与とみなされない可能性があります。
【財産が残っているのかどうかも要確認事項です】
いずれにせよ、この種の案件は訴訟まで行くことも想定しておいた方がいいでしょう。
なお、最初から《弱気で逃げを打つ》ようであれば、弁護士を替えることも考えるといいでしょう。
なお、遺産がほとんどのこっておらず、また、弟さんも財産を持っていないような場合、裁判に勝っても、結局は回収できない場合もあります。
回収の可能性があるのかどうか、この点も弁護士と相談されるといいでしょう。